ピレネー山地、亜高山帯における穿孔動物によるマウンド形成

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • An observation of mounds of burrowing animals in the subalpine zone of the Pyrenees, France

抄録

1 はじめに地形プロセス研究には、生物(動物)活動の役割という視点からのアプローチもある(Butler, 1995など)。フランス、ピレネー山地中央部の亜高山帯において、穿孔動物による表層撹乱の斜面プロセスにおよぼす影響を明らかにしたいと考えた。もぐらに代表される穿孔動物によって地表に搬出された土塊(マウンドmoundと呼ぶ、写真)の分布、マウンド形成の通年変化を先ず検討した。2 研究地域と方法ルセール山(頂2017m)の標高1400mあたりから頂上までは、わずかに矮小低木が散在する草地がひろがる。表層撹乱(マウンド形成)の空間的な分布を検討するために、ルセール山で斜面方位別の観測をおこなった。山頂を基点とする4トランセクト(東、北、西トランセクト各々約400m長、南トランセクト約1000m長)に沿って、約50mごとに方形区(10mx10m)を設定した。もう1本の南向き斜面のトランセクト(約1200m長)沿いでは、約100mごとに方形区を設定した(図)。1995年8月_から_10月、合計56方形区でマウンドの大きさ(長径長、短径長、高さ)を計測した。高度の異なるほかの3つの山(ラトウレット山、オビスク山、ソセド山)の山頂周辺にても、同様な観測をおこなった。これらの山では、方形区での観察ではなく、東西南北方角トランセクト(約10m幅、150_から_300m長)に沿って、1995年10月_から_11月に観測した。一方、マウンド形成の経時変化を検討するために、ルセール山頂近くの定点方形区(10mx10m、図中のFP)においては、上記同様に、1995年6月_から_1996年5月のあいだに観測を9回実施した。なお、長径20cm以上の大きさのマウンドを観測し、20cm以下の小マウンドは観測対象から外した。3 結果ルセール山頂付近の5トランセクト沿いの56方形区にては合計約1290個のマウンドが観測された。方形区あたりの平均マウンド数は23個である。マウンドは北、東、西向き斜面で少なく、南向き斜面に集中することが判明した(図)。ほかの3つの山でもマウンドは観察されたが、3山のあいだ、および斜面方位別のマウンド数の差異は大きい。4つの山をまとめると、マウンド分布は斜面方位に関係ないように思われる。大きいマウンドは径50cm、高さ15cm程度であり、平均的マウンドは径25cm、高さ5cm程度である。長径が斜面最大傾斜方向にならぶ円_から_楕円状の平面形を呈する。マウンド表面で観察されたレキ片最大は径数cmに達した。これは比較的細粒な物質が選択的に地表に運ばれることを示唆する。ルセール山の定点方形区にては、通年で新マウンドが69個認められた。辺長10mという方形区はマウンド形成の通年変化の検討には狭すぎると考えられるが、方形区周辺の広い範囲での観察を含めて、マウンド形成が春季に多いことを示す。搬出された多くのマウンドが斜面下方へ移動すると思われるので、斜面プロセスとしてのマウンド形成を無視できない可能性がある。また、マウンドは踏みつけによって容易に変形するので、テラセット(terracettes)の形成要因としても注目される。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205691835136
  • NII論文ID
    130007014078
  • DOI
    10.14866/ajg.2005s.0.248.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ