地方中核都市-福岡市における高齢化の進行と住宅地の持続に関する研究

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  • Population Aging and Sustainability of Residential Districts in The Regional hub city Fukuoka

抄録

<BR>1はじめに<BR>  急速に進む少子・高齢化を背景に,大都市においては人口の減少と高齢化が進むことが確実視されている.人口が減少すれば住宅が余剰になるだけでなく,高齢化や老朽化の進んだ住宅地が出現し,住環境の悪化から持続が困難な住宅地が出現することも危惧される.ところが,札幌・仙台・広島・福岡といった地方中核都市の中には,この状況下にあっても人口が増え,成長を続けるものがある.こういった都市は現時点において高齢化が進んでいないこともあり,どのような空間的な広がりを持って高齢化が進むのか,また高齢化が進むとみられる住宅地の現状はどうなのかといったことはほとんど把握されていない.そこで本研究では福岡市を対象に,高齢化の進行に関する将来予想をおこなった後に,高齢化が進むとみられる住宅地の現状を明らかにすることで,住宅地の持続性について考察をおこなう.<BR> 2分析方法<BR>  GISを用いて地域メッシュごとに,2000年と2015年の老年人口比率を計算し,福岡市における高齢化の現状と進行を予想する.2015年の老年人口比率は,コーホート変化率法を用いた将来人口推計により算出した.ここでは統計情報研究開発センターによるものと同様の仮定,1995~2000年の男女・年齢別コーホート変化率が以後も一定であるとの仮定をおいた.また,個々の住宅地を基本的な対象範囲とするため,比較的個別の住宅地を判別できる,地域メッシュ統計等の小地域統計を用いた分析をおこなう.その上で,今後高齢化が著しく進むと予想された住宅地を選択し,住民を対象とするアンケート調査を実施した.調査内容は世帯主の個人属性や第二世代の離家の状況などである.詳細調査地区は,福岡県福岡市南区柏原・東区東月隈・早良区野芥/重留・那珂川町王塚台である.該当地区の全世帯(3725)に調査票を配布し,郵送による回収をおこなった.回収数は608,回収率は16.3%である。<BR> 3調査結果の概要<BR>  2000年時点では,都心部にある既成の市街地では高齢化が進んでいるものの,福岡市全体としては,老年人口比率が低い地区が多く高齢化はさほど進んでいない.しかし,2015年になると,鉄道路線沿いや都心地区の高齢化の進行が比較的緩やかなのに対して,郊外地域,特に1970-1980年に造成された縁辺部の住宅地に老年人口比率が高い地区が広がっている.このことから,福岡市では縁辺部に高齢化が進む地区が現れると予想される.この結果を踏まえて行ったアンケート調査から,高齢化が進むとみられる住宅地の入居者は,特定の年代層に偏る傾向がみられた.また,彼らの子供世代である第二世代は結婚・就業・進学などを契機として,一度は離家する傾向が確認された.こういった住宅地において住宅地の機能が維持できるか否かは,地区の人口が再生産されるかどうかによるところが大きい.したがって現時点で新たな住民がさほど転入していない地区では,離家した第二世代が地区内に戻ってくるかどうかが問題となる.そこで,離家したのち家を購入した第二世代の居住地を調べたところ,彼らの多くは第一世代の近隣には住宅を購入していなかった.この点からみると,住宅地としての持続が困難になる地区が縁辺部に現れる可能性が否めない.<BR> 4その他<BR>  本研究は,CSIS・第一住宅建設協会・シンフォニカ統計GIS研究助成からの支援を受けている.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205691963520
  • NII論文ID
    130007014200
  • DOI
    10.14866/ajg.2007s.0.25.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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