モンゴルの村落地域における日用消費物資の流通
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- 高原 浩子
- 京都大学大学院 人間・環境学研究科 院生
書誌事項
- タイトル別名
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- Distribution of commodities in Mongolian villages
- Cases of Dornod Prefecture
- ドルノド県の事例
説明
<BR> 本発表は、市場経済化以降のモンゴル国内において、人々の暮らしを支える日用消費物資がどのように流通しているのかを明らかにしようとする研究の一環として、地方の村落地域における物資流通を取り上げるものである。本研究においてはモンゴル国内の物資流通について、首都、地方都市、地方都市周辺村落、地方の村落地域、国境地域のそれぞれについて調査を進めているが、今回は地方の村落地域を対象として物資流通を追い、そこに現れる地域的関係性の端緒を探ることを試みた。このテーマへの取り組みから、人口密度が低く首都や地方都市からも相当の距離があるモンゴルの地方の村落地域では、その物資流通に関してどのような特徴や傾向がみられるのかということを明らかにしたい。<BR> 2006年8月、モンゴルの東部、中国、ロシアの両国との国境を有するドルノド県 (Dornod Aimag) において、地方都市および村落地域での物資流通に関するフィールドワークを行った。この県の中心地であるチョイバルサン (Choibalsan) は人口約7万3千人(2005年)の町で、首都ウランバートルから北東へ陸路で約660kmに位置する。この調査ではチョイバルサンに加え、県内の2村落においても調査を行い、対象地における流通について情報収集を試みた。地方集落の事例として取り上げるのは、チョイバルサンから北西へ陸路で約190kmのところに位置するバヤン・オール村(Bayan –Uul Sum) およびチョイバルサンから北西へ約120km、バヤン・オール村との間に位置するツァガーン・オボー村 (Tsagaan Ovoo Sum) の2村落である。この2村落の商業施設を訪ね、商業者に対して、商品である日用消費物資について、主にその仕入れについて対面式のアンケートおよび聞き取り調査を行った。<BR> この2村落において調査を行ったところ、以下のようなことがわかった。まず、バヤン・オールでは約20店舗の商業施設が存在し、そのうち市場は1ヶ所、他は食品店・雑貨店であった。バヤン・オールへ運び込まれる物資の流通ルートとして県の中心地であるチョイバルサンの卸売業者からの仕入れがある。その頻度は1ヶ月に平均2、3回で食品類、小雑貨類が仕入れられる。またチョイバルサンでの仕入れと並んで首都ウランバートルの市場の卸売業者からの仕入れが行われている。この頻度は1ヶ月に1回程度と少ないが、広く選択されている仕入先であることが確認できた。そのほかに雑貨の仕入れにおいては1ヶ月あるいは2ヶ月に1回の頻度で中国内蒙古自治区のエレンホトでの仕入れが行われている。ツァガーン・オボーの商業施設においてもほとんどの回答でチョイバルサンとウランバートルの両方での仕入れが挙げられ、雑貨類の仕入れについては中国のエレンホトや満州里へ赴いていることがわかった。<BR> これらの結果から、中国とロシアとの国境を有するドルノド県のこれらの地域において、雑貨に限っては中国からの仕入れがあるものの、ロシアからの仕入れは見られず、食品類は県の中心地やウランバートルから仕入れられる傾向にあることがわかった。また県の中心地を経由せずにウランバートルへ直接至る道路を利用しての仕入れも行われており、県の中心地と村落地域との商業的結びつきに加えて、首都と村落地域とのダイレクトな関係性の存在を示唆する結果となった。
収録刊行物
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- 日本地理学会発表要旨集
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日本地理学会発表要旨集 2007s (0), 42-42, 2007
公益社団法人 日本地理学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205692000896
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- NII論文ID
- 130007014243
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可