空間情報データを用いたメソポタミア遺跡データベースの作成

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タイトル別名
  • The Database of the Ancient Sites in Mesopotamia based on Geospatial Information Data
  • The Case Study of Babil, IRAQ
  • イラク・バビル県を例として

抄録

<BR>1、遺跡データベース作成の背景<BR>  イラクはメソポタミア文明の中心地であり、19世紀の中頃より欧米の調査団によって数多くの発掘調査が行われている。日本からも1956年以降、数多くの調査団が派遣され、近年ではメソポタミア各地で年間10以上の調査団が発掘を行っている。<BR> それらの調査団は、遺跡の発掘で交易路や文化拡散の研究などを行ったが、調査対象は代表的な遺跡にとどまり、メソポタミア地域の遺跡分布を把握するには至っていない。<BR>  また、遺跡データベースの作成も行われているが、メソポタミア地域全域を対象とし、衛星画像などの空間情報データと既存の遺跡資料を統合したものは作成されていない。<BR>  遺跡の分布を明らかにするのには、可能であれば現地に赴き調査することが望ましいが、近年のイラクは政治的に不安定で紛争や戦争が絶えず、入国は困難な状況が続いている。また、2003年4月以降の治安の悪化により、遺跡は破壊・略奪、盗掘の対象とされているため、早急な調査と保護が必要である。遺跡の管理やパトロールに使用可能な、衛星画像地図をベースマップとした、正確な遺跡データベース構築が求められている。<BR>  すでに、我々は既存の発掘報告書や遺跡地図のデジタル化、遺跡用の衛星画像地図作成に取り組んでいる。<BR>  本報告では、国士舘大学で発掘実績のあるキシュ遺跡が含まれ、資料入手が容易なイラク中部のバビル県を対象とした。また、既存の報告書に記載されていない遺跡については、各種空間情報データから遺跡と思われる地点を半自動的に抽出する手法を採用し、遺跡データベースを作成した。<BR> <BR> <BR> 2、作成方法と結果<BR>  遺跡データベースは、GISを利用して作成と管理を行う。そのベースマップに使用する衛星画像データとして、主にALOSを採用し、補完するデータとしてQuickBird・SPOT・FORMOSAT・LANDSAT・CORONAを使用した。<BR>  高さ情報はALOS・ASTER・SRTMデータを利用した。既存の遺跡地図はデジタル化の後、地図上に描かれている都市を使用して幾何補正し、遺跡レイヤーを作成した。<BR>  対象地域のイラクで入手可能な地形図に、ソビエト軍製地形図がある。この地形図は、1970年代に発行されたもので、遺跡に関連する凡例が存在する。作成には現地調査と空中写真測量が使われており、適切に投影変換することで、近年の衛星データと重ねあわすことが可能であった。また、ソビエト軍製地形図と1960年代後半に撮影されたCORONA画像を組み合わせることで、近年の土地利用変化以前の状態を復元した。<BR>  バビル県でよく見られる遺跡は、テル(遺丘)と呼ばれる丘のような形状をしているため、衛星データから作成したDSMと衛星画像分類と組み合わせて、遺跡と想定される地点を半自動的に抽出することができた。また、作成したバビル県の遺跡データベースは、イラク考古遺産庁職員の協力を得て修正を行った。<BR> <BR> <BR> 3、おわりに<BR>  今後は、同様の手法で対象地域をイラク全土に広げていく。また、イラク国考古遺産庁との協力を強化し、文化遺産の保護に活用する。<BR> <BR> <BR>  本研究は、文部科学省科学研究費補助金・特定領域研究「セム系部族社会の形成~ユーフラテス河中流域ビシュリ山系の総合研究~」(研究代表者:大沼克彦)・計画研究班「西アジアにおける考古遺跡のデータベース化の研究:衛星画像解析による探査法」(研究代表者:松本健)および、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の公募研究により実施した。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205692004352
  • NII論文ID
    130007014250
  • DOI
    10.14866/ajg.2008s.0.201.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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