地理イラストによる人間-自然関係の表現

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タイトル別名
  • Representing Human-Nature Relationship in a Form of Geographical Illustration

抄録

<BR> 本研究は、ネイチャー・アンド・ソサエティ研究において重要なカギとなる自然への働きかけとその価値観(人間性)とそれらが生起する場所(空間性)に注目して、文化と環境との相互作用を説明するための手法の一つを作るものである。<BR>  文化と環境との相互作用は、人間と環境を構成する諸要素の存在・行為・結びつき・変化が組み合わさって起こっている。この結びつきと組み合わさり方(関係性)から明らかにされる。それにもとづいて、具体的な人々の認識、活動、地域性、生態史(環境変化・社会変化)を対象として、現実世界に起こっている「人間の環境の生き生きとした関係」として現れている姿が体系的に理解される。その相互作用を解明するにあたって、人々の環境への働きかけという主体的行為に注目すること、すなわち、「なぜそうするのか?」という人間性の内面を実証的に解明することが求められる。それは、まず、第一に人々の対象(環境要素)に対する感性と感情からとらえることができると申請者は考えている。そのような人間の理解があって、社会・文化の多様性や環境問題への関心という豊かな人間の理解と現代社会の問題解決への視座が生まれるであろう。しかし、人間性は内面的なものであり、さらに環境という現実的・空間的要素とを合わせて分析しその結果を説明することは、しばしば困難を生じる。環境要素の存在を空間的かつ変化する状況的なものとして説明するには、相互関連を空間的に位置づけることが有効である。そこで、申請者は、主体-環境の関係性を可視化することによって、それが可能になるのではないかと考え、イラストの技法を適用することが良いのではないかと考えた。イラストの特性は、可視化、行為の描写、感情表現、単純化と強調、定式化された技法を有する点にある。とくに主体の動き・感情や空間表現および時間の流れや変化を表すストーリー構成においてイラスト描画の方法は適している。それは、共通認識されたルールをもって定式化されているため、写実的なあるいは抽象的な絵画とは違い、描画者の心象ではなく、対象となる人々の意識に基づいて事実を描写することができる。そのため、研究対象とそれを受け止めようとする者の間で共通に議論できるプラットフォームになる。<BR>  「人間と環境との生き生きとした関係」を、自然・社会・文化が合わさっている動きのある生きた世界として図化し、その場所に生起する人間の活動を感情とともに空間的に構成する新しい図表現を、「地理イラスト」と称し、その事例を製作するとともに技法を構築する。それによって、人間性と空間性が融合された「人間と自然」の相互作用の形成プロセスとインタラクションを説明する。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205692064512
  • NII論文ID
    130007014347
  • DOI
    10.14866/ajg.2007f.0.105.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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