流山市新市街地における夏季気温分布の特徴

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  • A characteristic of temperature distribution in summer over the new urban area of Nagareyama

抄録

<BR>1.はじめに<BR>  都市内緑地によるヒートアイランド緩和効果に関する研究は東京を中心として数多く行われ、その有効性について明らかにされてきている。これまでの研究では市街地化された地域を対象としてきたが、市街地化に伴うその前後で緑地によるヒートアイランド緩和効果が、どのように変化するのか明らかにされていない。<BR>  流山市ではつくばEX沿線開発に伴い現在まさに開発が進んでおり、市街地化後のヒートアイランド化が懸念されている。本研究では、現在開発が進行中の流山市新市街地を対象とし、開発前後における緑地によるクールアイランド効果の違いについて明らかにすることを目的としている。本報では昨年夏季の観測結果から、緑地内外の平均的日変化の違いと集中観測の結果に関して報告する。<BR> 2.観測方法<BR> ・気温定点観測:2006年7月26日から流山市内の温度分布を明らかにするため、64台の温度ロガーの設置を始めた。そのうち大規模緑地である市野谷の森内外にはクールアイランド効果の把握のため39台を設置した。温度ロガーは小学校の場合は百葉箱内に取り付け、それ以外は塩ビ管を二重にして断熱シートで覆ったシェルタ内に取り付けた。測定は10分間隔とした。<BR> ・集中観測:市街地及び大規模緑地周辺の詳細な気温分布を明らかにするために、2回の集中観測を行った。8月19日の集中観測では、市街地を対象として自転車による移動観測を行い、小規模緑地などを含めた日中の詳細な温度分布を調べた。また8月29~30日の夜間集中観測では、市野谷の森周辺の詳細な温度分布を調べた。<BR> 3.晴天日による市野谷の森内外と市街地の気温変化<BR>  森が失われることによる温度環境の変化を調べるため、さら地に近い状態である森周辺と森内部の気温を比較した。使用したデータは、データとして利用できる定点観測の8月19~31日の間で、市野谷の森内部に設置した9台とその周辺の4台(約100m以内:さら地に近い状態)、付近に緑地を持たない市街地の6台である。平均的日変化の天候による違いを調べるため、期間全ての平均(13日間)と晴天日の平均(8日間)を比較した。<BR>  図は晴天日における日変化を示したものである。森とその周辺及び市街地の気温差は、日中の12~14時に最大となり3℃前後となるが、森とその周辺の気温差は明け方にほぼなくなることがわかった。日中の気温差については、従来の都市内緑地の研究(例えば、成田ほか 2004; 浜田・三上 1994)と同等の気温差を生じているが、夜間は従来の都市内緑地の研究に比較して、気温差が小さくなることが確認された。これは輻射熱による影響がいまだ小さいからと考えられる。<BR> 4.文献<BR> 成田健一・三上岳彦・菅原広史・本條 毅・木村圭司・桑田直也2004. 新宿御苑におけるクールアイランドと冷気のにじみ出し現象. 地理学評論 77: 403-420.<BR> 浜田 崇・三上岳彦 1994. 都市内緑地のクールアイランド現象――明治神宮・代々木公園を事例として. 地理学評論 67A: 518-529.<BR><BR> 本調査は環境省「地域の熱環境改善構想」適用第1号として、流山市の委託業務(グリーンチェーン戦略推進方策に関する調査)のもと、江戸川大学(社会学部ライフデザイン学科森島研究室)が実施したものである。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205692089600
  • NII論文ID
    130007014396
  • DOI
    10.14866/ajg.2007s.0.188.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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