生涯学習・社会教育分野における地理教育のあり方

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  • Proposals foe geography education in lifelong learning and social education field

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抄録

1.生涯学習・社会教育分野における地理教育の現状と課題。<BR> ここ数年「地理(地図)ブーム」が続いてきた。「ご当地検定」が続々登場し、「旅行業界」、「測量業界」以外の一般国民が多数受験している。地図は「おしゃれ」なインテリアとして評価されており、地理(地図)関係書のなかには数十万部を越える「売れ筋」商品も多数ある。しかし、既存地理学界や地理教育界との連携は弱く、地理学者が「雑学」への関与を嫌うためか、地理学界としてこの地理ブームを十分に受け止めきれていない。<BR> 一方、社会人を対象とした「各国事情」、「GIS」、「地域分析」等の研修分野は、GISを除いて低調である。海外赴任に際して相手国の文化や社会に関する正確な知識と理解が求められるが、地理学はその需要と期待に応えていない。公務員研修でも市町村合併や防災対策等、地理学の本領を発揮すべきテーマは多々あるが、少数の地理学者が個人的に活躍するだけで、地理学を冠した組織的な動きがない。社会教育分野では多くの研修が企画されるが、地理学の情報発信力は低い状態にある。<BR><BR>2.生涯学習・社会教育分野における地理教育振興の方向性<BR> 上記のような現状と課題認識、および地理学を取り囲む厳しい環境を踏まえると、今後は以下のような地理教育振興の方向性を強力に打ち出すことが必要と思われる。<BR>(1)生涯学習・社会教育分野の地理教育プログラム開発<BR> 生涯学習・社会教育分野における地理教育の現状を的確に把握し、問題点を摘出することが急務である。さらに、その問題点を十分に分析した上で戦略的に課題を設定し地域特性や年齢、ニーズ等に対応した地理教育プログラムを構築する必要がある。<BR> 例えば、朝日カルチャーセンターの「野外お天気学校」は、募集と同時に満席になる人気講座である。この講座は地理学出身のNHKキャスター平井信行氏の担当で、地理関係講座も工夫次第で人気講座となりうる可能性を有している。「団塊の世代」が定年を迎える「2007年」以降、生涯学習ニーズの急増が予想される。地理学界としての的確なプログラムの提供が求められる。<BR>(2)地理学の有用性を社会に認知させるPRプロジェクト<BR> 地理学界として「地理学は生涯学習、社会教育に貢献可能である」ことを社会に認知させるべく情報発信する広報・PRが必要である。その際、個々の地理学者や地理学教室の努力に加え、地理学関連学会が連携して社会に広報・PRすることが重要となる。<BR> 今期地理教育専門委員会では、実業界で活躍する地理学教室出身者に対するインタビューを実施し、「地理は実社会に役立つ!」という学界外の声を集めてきた。このような声を多数集めて的確にPRすることが求められる。<BR>(3)社会教育に参加可能な地理学徒リスト(データベース化)<BR> 地理教育を生涯学習・社会教育分野で活用してもらうには、「地理学者は何を教えることができるのか?」という問いに的確に答えるデータベースが必要となる。講師依頼等に必要な情報(例:発表論文、コラム等を含む発表レポート、講演・研修・業務の実績 等)を含めた地理学者のデータベースを、地理学関連学会が連携して地理学界として構築しなければならない。<BR>(4)研修の充実と資格制度の構築<BR> 成果主義や自己啓発を重視する労働力市場では、「専門教育→実務訓練→認定試験→継続教育」を認証する資格の役割が高まる傾向にある。地理学も、大学等の専門教育をスタートと位置づけ、継続教育としての研修を受け持つ機会を増加させる必要がある。<BR>  地理学界が独自に資格を構築する場合でも、他の資格と連携を図る場合も、継続教育としての研修を如何に多数開講できるかが重要となる。その際、地理学者が講師として既に参画する各種講座に対しても、「学会認定講座」、「学会協賛講座」等の認証を付与する仕組みが検討されるべきと考える。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205692112896
  • NII論文ID
    10020532289
  • NII書誌ID
    AA1115859X
  • DOI
    10.14866/ajg.2006s.0.46.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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