切迫する首都直下地震災害とは
書誌事項
- タイトル別名
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- What is the Imminent Earthquake Disaster of Capital Region Directly above Epicenter
- Feature Imaged from the Damage Estimation Research
- その被害想定から
説明
日本の首都機能は、南関東地域の複雑な地殻構造の上に展開している。それ故に、首都としての東京大都市地域は、世界でも最も地震の起きやすい地域の一つである。様々なタイプの地震が発生するが、そのうち震源の浅い地震は大きな被害をもたらす可能性が高い。太平洋プレートの起因する地震は震源が深いのに対し、フィリッピン海プレートと北米プレートの境界面(東京都南部で20km、北部で30kmの深さ)やフィリッピン海プレート内部での地震は、震源が浅いため、地震規模が小さくても大都市の直下で発生すると、大災害となる可能性がある。この内陸の浅いところで発生する「首都直下地震(マグニチュード7クラス)」の切迫性が高まっている。文部科学省の地震調査委員会の長期評価では「首都地域にM.7クラスの直下地震が発生する可能性は30年間で70%」である。これは、宮城県沖地震の99%、東海地震の86%(参考値)に次いで高い。 対策を考える上で最も困難な要素は、「首都地域のどこで発生するのかが分からない」ことである。地震災害は、誘因(外力)である地震動(震度:地震規模(マグニチュード)と震源からの距離、各地域の地盤構造によって規定される地表での地震動の強さ)と素因(その地域の土地利用状況や社会状況)とによって決定される。首都地域が世界最大・最高密の都市であることが、被害を大きくしてしまう潜在的脆弱性を持っている。 切迫する首都直下地震に対して、抜本的に震災対策を見直すべきとして、中央防災会議は首都直下地震対策専門調査会を設置し、対策の前提とするために被害想定調査に取り組み、2005年に首都直下地震対策大綱とともに公表した。 被害想定には地震規模と震源位置を設定しなければならない。地震タイプを3種(プレート境界型、プレート内部型、活断層型)、震源位置を境界型(M.7.3)で3,内部型(M.6.9)で10、活断層型(M.7.0_から_7.5)で5、合計18の想定地震を設定した。 阪神・淡路大震災の知見を活用しつつ、首都地域の地域特性に配慮して、定性的な被害想定も視野に入れて検討してきた。 被害が最大になる「東京湾北部地震」「都心西部直下地震」と、埼玉県の被害が最も大きくなる「さいたま市直下地震」「関東平野北西縁断層帯地震」の主要な被害想定結果は表1である。 地震被害は発災時の状況によって異なる。最も建物被害が大規模になるのは「冬・平日夕刻・風速15m/s」の状況下、人的被害が最大となるのは発災時間が「早朝5時」の場合であった。 これらの被害想定結果は、阪神・淡路大震災の2_から_8倍の被害規模となっている。東京湾北部地震では表1のほか、ブロック塀・自販機等転倒17万件、停電160万件(6日間)、通信支障110万回線(2週間)、断水1100万人(30日間)、ガス支障120万件(55日間)、自力脱出困難者4,300人うちエレベーター停止30万基による閉じ込め者12,500人、帰宅困難者650万人、直後の避難所避難者450万人、自宅を全損した世帯160万世帯など。これらの直接被害の復旧復興費用としてみた直接損害額は67兆円、生産性低下に伴う間接被害金額が45兆円と想定した。 首都直下地震は、大量の被害をもたらす「量」的な巨大震災であるとともに、東京都心直下では政治・経済・行政の国家中枢機能を巻き込んだ「質」的なスーパー都市災害でもある。中越地震の60_から_240倍にも及ぶ膨大な被害量に対処するには、個人の被災者の自立的準備と被害軽減の事前取り組みしかない。他方戦後には経験していない首都機能の被災に備えては、政府が主導する被害軽減対策の事前推進を前提に、国家中枢機能継続のための危機管理の準備対策を急がねばならない。
収録刊行物
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- 日本地理学会発表要旨集
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日本地理学会発表要旨集 2006s (0), 55-55, 2006
公益社団法人 日本地理学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205692114048
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- NII論文ID
- 130007014440
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可