振動ノズル型散水装置を用いた人工林斜面における浸透能の比較

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  • Measurements of Infiltration Rate Using a Oscillating Nozzle Rainfall Simulator in Forest Plantation

抄録

<BR>1.はじめに<BR>  日本の森林の約40%が,スギ・ヒノキなどの人工林であり,そのうち約8 割が徐伐・間伐などの手入れを必要とする45 年生以下の森林である。手入れが適切に行われないヒノキ林地では,下層植生が減少し,落葉が消失しやすいため,林床が裸地化することが知られている。また,このような林内では,最終浸透能が低下することが報告されている。しかしながら,円筒管式や,霧雨状の降雨型浸透計では(湯川・恩田, 1995),測定された浸透能がかなり高い値を示している。そこで,本研究では,林内雨並みの雨滴衝撃を再現したポータブルな散水装置を用いて各地の浸透能の測定を行った。 <BR>2. 調査地域および方法<BR>  実験には,スプレーイングシステム社製Veejet 150ノズルを使用した振動ノズル型人工降雨装置を使用した。散水装置へは,エンジンポンプを使用してノズルに圧力をかけた状態で使用した。林内における雨滴衝撃を再現し,高い雨滴衝撃を維持したまま散水強度を下げるため,ノズル部を往復振動させ,散水を不連続的にすることにより,大きな雨滴でも,過大とならない降雨強度にとどめることができる.ノズルの往復振動角度は130度,振動周期は,毎分13.5往復となるように調節した。方向転換時の散水量の増加を防ぎ,さらには散水量を調整するために,ノズルの可動部の左右にキャッチトレイを設置し,キャッチトレイに散水された水は再びタンクに戻るようにした。正味の散水範囲は,45度である。<BR>  ノズルは地表面より2mの位置に設置し,振動周期は,毎分13.5往復となるように調節した.散水範囲は,プロット外にも15%程度散水されるように調整した。散水した水は,プロットは幅1 m,奥行き1 mの正方形の範囲にほぼ均一に散水される。キャリブレーションによって,散水強度は,約180 mm/hに調整され,雨滴衝撃力は,15 J/m-2mm-1 と林内雨並みに設定することができた。<BR>  浸透能測定地域には,地質構造や年間降雨の異なる全国4ヶ所を選定した。高知県大正町の,ヒノキ林,スギ林,広葉樹林,三重県大紀町の施業状況の異なるヒノキ林,長野県伊那市のヒノキ林,東京都青梅市の,ヒノキ林,スギ林,広葉樹林である。なお,林床が被覆された条件下では,霧雨型(湯川・恩田, 1995)の装置を併用した。<BR> 3.結果と考察<BR>  ヒノキ林における振動ノズル式散水装置の浸透能値の結果と植生およびリター乾重量の関係より,植生とリターが減少するにつれて浸透能が小さくなることが示された。特に,リターが失われると急激に浸透能が低下することから,植生やリターが雨滴衝撃を和らげる役割を果たしていることが考えられる.逆に,荒廃した林内のような地表が露出した土壌には雨滴衝撃によって,難透水性の土壌クラストが形成されている可能性が示されている(Agasi et al 1994;恩田1995;恩田・山本 1998).下層植生やリターには雨滴衝撃から地表面を保護し,浸透能低下を防ぐ役割があることが考えられる.また,ヒノキ林において浸透能の値を,150mm/h以上にするためには,少なくとも1kg/m2の下層植生とリター量が必要であることがわかった。<BR> <BR> 文献:湯川・恩田 (1995):. 日本林学会誌, 77(3), 224-231.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205692196864
  • NII論文ID
    130007014547
  • DOI
    10.14866/ajg.2007s.0.97.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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