武甲山における人工地形改変の定量的評価

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  • Quantitative estimation of artificially changed landform in Mt.Buko

抄録

はじめに<BR>  地形に対する人為的な影響は18世紀半ばから急激に増加した(例えばJones 2001)。その中でも人工地形改変は現在地形への影響の大半を占めるまでになっている。このように人工地形改変が地形変化の要因として重要なものになっているにもかかわらず、人工地形改変の改変量を定量的に分析した研究は少ない。<BR>  そこで本研究では、石灰石の露天掘り採掘による人工地形改変の事例である武甲山について、DEMとGISを用いた地形改変量の定量的な評価を行った。<BR><BR> 方法<BR>  まず図幅中に武甲山がある25000分の1地形図「秩父」とその旧版地形図を元に等高線ベクトルデータを作成し、それから10mメッシュのDEMを作成した。分析範囲は武甲山を中心とした南北3.75km、東西5.3kmの範囲である。分析期間は使用した地形図などの作成年代から1970年から2006年までの36年間である。この期間内で6つの年代のDEMを作成した。図の(a)は1970年、(b)は2006年のDEMで作成した陰影図である。そして、作成した6つの年代のDEMの内、最も古い年代のDEMから他の各年代のDEMを引く形で差分を計算した。<BR>  続いて、差分の値を採掘域ごとに集計し武甲山の改変土石量を求めた。採掘域を地形図の判読や差分データを元に抽出し、抽出した採掘域ごとに体積を集計した。こうして集計された体積は誤差及び自然の営力による侵食量が含まれているので、分析範囲の非改変域の単位面積あたり改変量を採掘域のそれから引くことでそれらを取り除いた。<BR><BR> 結果<BR>  武甲山の採掘域全体の単位面積あたり改変土量は61m3/m2だった。森山(1983)や門村・山本(1978)がまとめた他の人工地形改変の事例と比べると単位面積あたり改変土量が50m3/m2を上回るものはまれであり、武甲山の人工地形改変の単位面積あたりの強度はかなり強いと考えられる。<BR>  また、集計の結果武甲山の採掘域全体の総改変土石量は13.3×107m3だった。これは貞方(1985)が求めた山陰地方における鉄穴流しによる河川流域別の総廃砂量とほぼ同規模である。しかし、貞方(1985)の求めた全4河川の総廃砂量を元に改変期間を300年と仮定して改変速度を見積もると16.4~23.2mm/yrであるのに対し、武甲山の採掘域全体での人工地形改変の速度は1688.6mm/yrである。つまり武甲山の人工地形改変は、山陰地方の鉄穴流しによる人工地形改変とほぼ同じ量の土砂を約70~100倍の速さで運び出したことになる。こうした差は採掘技術や鉱産資源の賦存状態、鉱産資源の需要量の違いによるものと推測される。このように、武甲山の人工地形改変は、日本における他の人工地形改変の事例に対してその規模や改変速度がかなり大きいことが定量的に評価できた。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205692343808
  • NII論文ID
    130007014752
  • DOI
    10.14866/ajg.2010s.0.114.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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