小学校における新しい世界地誌教育のあり方を考える

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  • What a New Education for World Geography in Elementary School should be

抄録

小学校における新しい世界地誌教育のあり方を考えるWhat a New Education for World Geography in Elementary School should be小口 久智 (山形県中山町立豊田小学校)Hisatomo KOGUCHI (Toyoda Elementary School)キーワード:世界地誌教育、一貫カリキュラム、心象地理、小学校Keywords:Education for World Geography, Integrated Curriculum, Imaginative Geographies, Elementary School _I_ はじめに 本発表では、日原(2005)による[義務教育=最適なスケールでの地誌教育]→[高校=マルチスケールに扱う地誌教育]という一貫カリキュラム試案を念頭に、小学校社会科における世界地誌教育実践の課題と可能性について検討する。_II_ 小学校社会科における「世界」学習の課題我が国の国際化が進む中、小学校社会科においても各学年で「世界」とのつながりや国際連合のはたらきについて学習する内容が取り上げられるようになった。しかし、学習指導要領によれば、小学校社会科は、指導内容や発達段階に応じて、「社会的事象について考える力」の育成を目指している教科とされている。そのため、小学校社会科におけるこのような「世界」学習を、世界地誌教育の一端を担う学習と見なすことはできない。なぜなら、小学校社会科で登場する「世界」は、地理的な事象に対する関心を高め、地域的特色を考察理解させ、地理的な見方・考え方の基礎を培うことを目指すためのものではないからである。このことは、6年生社会科において、我が国とつながりの深い国について学ぶことに関して、学習指導要領解説の中に、次のような但し書がなされていることからも読み取ることができる。「なお、ここでは、つながりが深い国の地形や気候、産業、人口などの概要を調べることが趣旨ではないことに留意する必要がある。」 また、限られた時間の中で、学習対象として「世界」を取り上げ、子ども達に調べ学習を強いることは、逆に、子どもたちの心象地理を偏らせ、社会認識を閉じたものにしてしまう危険性がある。_III_ 小学校における世界地誌教育の可能性確かに、現代という時代は、子ども達の自己形成(多様な場所や異質な他者と出会いながら自己を織り上げていく)空間は、地球規模まで広がっている時代だと言える。しかし、そのことを、様々なスケールを対象とした世界地誌学習を小学校で行うための根拠にすることはできない。これまで、小学校における世界地理(地誌)教育として、様々なスケールの場所や地域を学習対象として取り上げる学習が実践されている。だが、それらは、人々のくらしや生き方を共感的に理解するための異文化理解学習である場合や、“地球のためにがんばろう!”運動のための地球市民教育的イベント学習である場合が多かったように思える。 もちろん、このような取り組みは、子ども達の心象地理を豊かにするとともに、テレビ放送や小説などの読み物と同じように子ども達の視野を広げていくためには有効な取り組みであり、地理的な学習と見なすこともできるが、内容的には世界地誌教育とは言えるものではない。 では、小学校において世界地誌教育を実践する可能性はあるのだろうか。ここでは、それに答えるために、二つの方向性を示しておきたい。_丸1_5年社会科を世界地誌教育に_から_現行の枠組みの中で_から_ 社会科カリキュラムの配列は基本的に同心円的拡大方式となっている。そのため、対象地域が「身近な地域」から「身近でない地域」になる小学校5年生でつまずく子どもが多いと言われている。子ども達の心象地理の中では、生活世界を離れた地域は、すでに「外国」なのである。 そこで、5年社会科における産業学習と国土学習を世界地誌教育として再構成する。A社の教科書を見ると、「米づくりのさかんな庄内平野」「水産業のさかんな枕崎市」というように、すでに動態地誌的な単元で編集されている。ローカルスケールで地域を取り上げ、日本という世界について学ぶ世界地誌教育が構想できる。_丸2_6年社会科で世界地誌教育を_から_現行の枠組みを超えたものとして_から_ 現行の枠組みの中でも、地表面の経済的相互パターンやネットワークに着目するという地理的な学習が3年社会科から行われている。そこで、6年社会科における「つながりの深い国」の学習を、現行の枠組みにとらわれないで、世界地誌教育として内容を広げて構成する。但し、この場合は、中学校社会科との内容的整合性を調整していくことが求められる。文献日原高志 2005.新しい世界地誌教育のあり方を考える(その3) !) 中高一貫カリキュラム試案!).地理要旨集68:41

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205692476288
  • NII論文ID
    130007014907
  • DOI
    10.14866/ajg.2006s.0.148.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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