風衝樹による卓越風の推測と堆雪分布

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  • Presumption of prevailing wind from wind deformation tree and distribution of snowfall.

抄録

はじめに 上越国境に位置する平ヶ岳は頂上部が平坦で湿原が広がっている。この湿原はオオシラビソ低木林と複雑に入り組んで分布している。この湿原の主な形成要因は残雪であると考えられ、その場所における堆雪量の夥多によって生育する植生が決定していると推測される。この湿原周囲の低木林は風衝樹型を呈する樹木個体が多く見られ、その樹型から冬期に強い卓越風が吹くと推測される。この湿原の形成要因と考えられる残雪分布の偏りが冬期の卓越風の風向によって決定されると考え、偏形樹の樹型・分布調査を行って冬季の風向を推定し、堆雪分布への影響を検討した。調査方法 現地でオオシラビソの偏形樹について樹高、樹型などの毎木調査を行った。調査結果を小川(2001)などの既存の文献を参考に風衝度及び成因となる風向について推定を行って、冬期卓越風のマッピングを行って卓越風分布図を作成した。この卓越風分布図と残雪期の航空写真を比較して風の分布が堆雪状況へ及ぼす影響を検討した。さらに、残雪期に現地踏査を行って残雪の分布と植生分布の関連を検討した。結果と考察 平ヶ岳頂上部での偏形樹の樹型より、この地域の偏形樹は積雪期の卓越風によって形成された事が判った。図1に風衝樹調査の結果より推定された風向分布を示した。これより、平ヶ岳頂上の西側では南からの風が強いと考えられる。また、頂上北東側では稜線の西側は北西からの風、稜線の東側は南西からの風が卓越している。、また、頂上部周辺では南からの風と北西からの風が入り交じった状況であった。これらのことから、平ヶ岳頂上では冬期の季節風である北西からの風が卓越せず、周囲の地形の影響を強く受けて複雑に卓越風が吹いていることが明らかとなった。残雪期にあたる1968年6月の平ヶ岳の様子を示した図2より、堆雪部分は風の吹走路の風下であることが判る。これより、平ヶ岳頂上部では吹走する風の影響を強く受けて堆雪分布が形成されていると考えられた。 そして、残雪期における踏査の結果、堆雪量が多い部分は森林ではなく湿原になっていることおよび、堆雪量が著しく少ないところでも森林植物が生育していないことが明らかとなった。以上より、冬期の卓越風が作り出す積雪の偏りによって、植生の分布が規定されていることが明らかとなった。文献:小川肇 2001 偏形形態のタイプとその成因 「日本の気候景観」 7-11.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205692519168
  • NII論文ID
    130007014961
  • DOI
    10.14866/ajg.2006s.0.134.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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