小学生の県名認知度に関する調査結果とその課題

書誌事項

タイトル別名
  • The result of name-of-a-prefecture cognitive investigation of a schoolchild and its subject

説明

1.調査の背景と概要 教科書地図帳のメーカーである帝国書院に、一昨年、地図・地理教育の研究・普及を目的とした「地図・地理普及特別班」(以下、普及班)という部署が誕生した。 帝国書院の小学校用地図帳は全国の9割以上の学校で採用されている教科書であるが、その活用の実態などは、よくわかっていなかった。そこで普及班では、昨年の平成14年1月から3月にかけて、全国の小学4から6年生を対象に、教科書地図帳に関する意識調査および県名認知度調査を実施した。結果的に、42都道府県の約140校から、約12,000人の児童の回答を得ることができた。今発表では、それらの調査結果を報告するとともに、小学生をとりまく地図・地理教育の問題についても検討してみたい。2.調査の結果 県名認知度調査は、日本の白地図に、知っている県名を記入してもらう方法でおこなった。県の名前と、その所在地が一致している場合を正答とした。結果は予想以上に悪く、県名を一番認知している学年である5年生段階でも、正答率が50%を越える県は、11県のみであった。つまり、残りの36県は、半分以上の児童が認知できていないのである。また、3人に1人しか認知できていない県は、36県中13県にものぼる。正答率が30%台をきる県も、4県あった。県名認知度が高い県は、北南端の県、人口集中県、形や位置が目立つ県であり、認知度が低い県は、学習で取り上げられことが少ない県、内陸県が多い。特に西日本の県が多い。これは、北(東日本)から順番に覚えていくことと関連があると考えられる。学年別の平均県名獲得数を見ると、4年生で13.6県、5年生で20.0県、6年生で19.2県となる。5年生よりも6年生の成績が悪くなるのは、注目すべき点である。地図帳に関する意識調査では、地図帳の好き嫌い、地図帳の活用度、などについて調査したが、その中でも、学年を追う毎に「地図好き」の数は減り、地図帳活用頻度も下がるという結果が出ている。特に6年生での活用頻度は5年生にくらべ大きく下がっており、この事実と、前の県名獲得数の低下との関係がみえてくる。 また、地図の好き嫌いと、県名認知度の間には、関係が見られ、地図帳を好きと答えた児童ほど県名認知度が高い傾向にあるという結果もでた。3.浮かび上がる問題点 都道府県を認知することは、小学校段階で不可欠な学力であると考える。実際、平成14年度から施行された指導要領においても、小学校段階で47都道府県の名前と位置を認知することが求められている。しかし今回の調査結果を見てもわかるように、実際には県名を認知させる学習が十分に行われていないことが明白である。これは、地図の使い方や、都道府県について指導する「単元」が設定されていないこと。指導する先生方の意識が十分でないこと(小学校は教科担任制でないため、先生により得手不得手がある)。覚えさせることを避ける傾向が強くなっていること。などにその原因を求めることができるだろう。実際、全国の小学校現場を歩いてみて、「地図帳の索引を使いこなす」、「凡例を読みとる」などの基本的な地図指導がきちんとできていないクラスが大半を占めることがわかった。地図嫌いの大きな理由の一つに、「使い方がわからないから」というものが挙げられるが、逆にいえば、きちんとした指導があり、地図の使い方を理解させることができれば、地図嫌いを減らすことができるのは間違いない。地図嫌いを減らすことで、県名認知度を上昇させることも可能であろう。 小学校を含め、地図・地理教育をとりまく環境がよいものであるとは、決していえない。しかも、年々悪くなってきていると感じる。普及班としても、如何にして地図の活用を普及させていくか、如何にして地図や地理に親しんでもらい好きになってもらうか、についての研究を続けていきたい。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205692574336
  • NII論文ID
    130007015075
  • DOI
    10.14866/ajg.2003f.0.70.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ