レマン湖躍層内に見られる二重拡散対流と内部波の影響

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  • Double-diffusive convection and internal waves in the thermocline of Lake Geneva

抄録

1. はじめに<BR>ローヌ川集水域の16%は氷河に覆われ、夏季は融氷の影響で流量が増加して濁度が高くなる。淡水湖で温濁二重拡散対流が発生するには、濁度とその粒径(沈降速度)が問題となる(Okubo et al.)。2002年夏のレマン湖でローヌ川濁水の振る舞いを観測した結果大規模な二重拡散対流(シルトフィンガー)が発生した証拠となる水温階段構造を見出した。本発表では観測結果をモデルで再現することでフィンガー領域の検証を試みる.<BR>2. 方法<BR>2002年7月31日、観測は主湖盆上流部14地点でCTD等をキャストし水温・濁度・溶存酸素・電気伝導度・クロロフィルa及びpHのプロファイルを得た(図1)。船上でリアルタイムに観測値をモニタリングし,とくに高濁度水が見られた4地点で採水し、翌日濁質量を測った。ローヌ川上流では翌8月1日に採水し同様にSS濃度を測定した。筆者らの二重拡散対流モデルを用い、河口における観測値を初期値として解析を行い、下流観測点での観測結果と照合した。<BR>3. 観測結果<BR>観測日のローヌ川流量は343m3/s、SS濃度は500mg/L程度であった。ローヌ川を流出した濁水は躍層深の変動範囲14_から_22m層に貫入し,コリオリ力の影響を受け北岸に偏り、主湖盆湖心に近いローザンヌ沖まで濁水プリュームが維持されていた。<BR>4. 二重拡散対流モデルの概要<BR>今回の観測点で最も濁度が高くピークも明瞭であったP8に関して計算を行った。モデルは50層固定で組んでおり今回はdz=1(m)とし,表層から50m深までを対象に計算した。初期値として、観測された水温分布(表層22℃、50m深7℃)を与えた。河口からP8までの4.4kmをLemmin(1998)の湖流観測値3.2cm/sで移流するのに要する40時間分を計算した。混合粒径の効果を出すため、C成分(12μm)とS成分(9μm)の2粒径を入れた。<BR>5. 計算結果の解釈:内部波の影響<BR>計算を40時間連続で行うと、濁水層厚が観測値の2倍以上厚くなる。そこで筆者らは、夏季のレマン湖躍層内で見られるケルビン波(Lemmin 1998)に着目し、内部波の通過に伴い躍層が膨れるときに濁りの低い湖水の逆貫入があると考えた。計算は2回に区切って行い(30時間と10時間)、1回目の計算結果に逆貫入の効果として水温と濁度の修正を行ってから2回目の計算を行った。これにより水温とSSが図2のように再現された。<BR>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205692580096
  • NII論文ID
    130007015087
  • DOI
    10.14866/ajg.2003f.0.29.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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