首都圏郊外のミニ開発住宅地における住民の入れ替え

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書誌事項

タイトル別名
  • Moving of residents of the small unplanned development of suburban residential area in the Tokyo Metropolitan Area
  • A case study of Fujimi-city Sekizawa area,Saitama prefecture
  • 埼玉県富士見市関沢地区を事例に

抄録

1.はじめに  郊外の一戸建て住宅は,住宅双六に代表されるように,終の棲家と位置付けられ,その住民の転出入については不問に付されてきた.居住遍歴の通過点として位置づけられていた公団の賃貸住宅は,1960年代を中心とした地方からの人口流入に対応するため,1960年代後半から1970年代前半にかけて大量に供給が行われた.しかし,公団の賃貸住宅はこれらの膨張した都市人口に対して十分な住宅供給ができたとは言えない.ファミリー向けの民営借家も借地借家法などの法制度によって供給は極めて少なかった.一方,公団の賃貸住宅やファミリー向け民営借家の補完的役割を担っていたのが,郊外にスプロールを伴って建設された狭小で低廉な戸建住宅である.  本報告では,主に1970年前後に開発された敷地面積100_m2_以下の戸建住宅が密集するミニ開発住宅地を事例として,住民の入れ替えとその特徴を明らかにする. 2.調査概要  本報告は敷地面積100_m2_以下の戸建住宅の割合が55.1%と高い,埼玉県富士見市関沢地区の3つの番地を事例として,計151筆の土地と建物の登記簿と住宅地図の居住者表示の分析が主である.当地域では1998年に登記内容がコンピュータ化されたため,1998年以前は閉鎖登記簿の閲覧を,1998年以降は登記事項証明書を発行した.A番地は1966年に開発され総戸数は40戸,平均敷地面積40.17_m2_で現在までに約3分の2が建替えを行っている.B番地は1971年に開発され,総戸数は48戸,平均敷地面積は82.89_m2_で現在までに約半数が建替えを行っている.最後にC番地は1977年に開発されたものが主で,総戸数は63戸,平均敷地面積は98.70_m2_で現在までに約4分の1が建替えを行っている.各番地の最寄り駅は,東武東上線みずほ台駅と鶴瀬駅で,各番地から両駅へは徒歩13分程度の距離にある.  なお,不動産登記簿の所有者と住宅地図の居住者表示の整合性については,住宅地図の表記に即応性がなく1,2年の表記の遅れはあるものの,ほぼ一致している.よって,関沢地区においては,所有者の変更は居住者の転出入とほぼ同義である.また,国勢調査の結果からも,ほぼすべての戸建住宅が持家であることも明らかとなっている. 3.結果 A番地では1966年から現在まで,計184回の所有権移転が確認できた.そのうち業者や相続・贈与に伴う所有権移転を除くと124回の所有権の移転であった.これは一筆あたり平均で3.1回の所有権移転があったということを示している.1966年の開発時から現在まで同一の所有者は1筆で,現所有者を除く,平均所有年数は約5年であった.所有者変更が活発なのは1960年代後半から1980年代前半までである.  B番地では,1971年から現在まで,計126回の所有権移転が確認できた.そのうち業者や相続・贈与に伴う所有権移転を除くと107回の所有権の移転であった.一筆当たりの平均所有権移転数は2.1回であった.入居当時から現在まで同一の所有者は12筆で,A番地と比べると滞留率は高いものの,約半数で1980年までに所有者移転があった.B番地の所有権移転の特徴は1990年以降の所有権移転が16回と,A番地の7回に比べて多いことである.  C番地では,1971年から現在まで,計94回の所有権移転が確認できた.そのうち業者や相続・贈与に伴う所有権移転を除くと83回の所有権の移転で,一筆当たりの平均所有権移転数は1.3回と他に比べると大幅に少ない.また,7割以上が開発時から現在まで滞留しており,所有権の移転は格段に少ない.なおC番地の居住者の前住地は4割が富士見市内であることが国勢調査より明らかになっている.  以上,各番地の所有権移転数の違いは開発時期,敷地面積,居住者の年齢などが密接にかかわっていると考えられる.また,A番地やB番地のように,1960・70年代に所有権移転が多かったのは,ファミリー向け民営借家の不足,急激な地価の高騰,低廉な価格といったことも背景としてあると考えられる.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205692640128
  • NII論文ID
    130007015162
  • DOI
    10.14866/ajg.2008f.0.92.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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