都市域における局地豪雨の事例解析

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  • A Case Study of Local Heavy Rain in Urban Area

抄録

_I_ 研究目的 近年,大都市を中心にして集中的な豪雨が観測されるようになってきた(Yonetani,1982;佐藤・高橋,2000)。特に首都圏では局地的集中豪雨による被害が相次ぎ,ヒートアイランドとの関係が指摘されている(三上,2003)。さらに,内陸部と海岸部の気温格差による海風の強化,ヒートアイランド強化によるヒートロー,海風の収束とエアロゾルによる凝結核の増加等,その原因は単純ではない。しかし,集中豪雨が夕方に多いことから(藤部,1998),ヒートアイランドによる強い対流性降水の可能性も考えられる。 名古屋市においても2004年9月5日の夕方に天白川沿いの瑞穂区で最大時間雨量107mmの局地的集中豪雨が発生した(図1)。これは,2000年9月の東海豪雨の最大時間雨量97mmを上回るものであった。そこで,この事例解析を行ったので報告する。_II_ 豪雨時の気圧配置 集中豪雨が発生した時の気圧場は(図2),北太平洋高気圧が西日本に張り出す典型的な夏型であるが,日本列島上には東西に延びる秋雨前線が停滞している。したがって,北太平洋高気圧からの南よりの風が秋雨前線に暖湿流を送り込む状況にあるが,九州の南の海上には台風が北上していて2000年9月の東海豪雨時と似た気圧配置だった。しかし,今回の集中豪雨は,持続性のない単発的なもので瑞穂区という狭い特定地域に起こった現象であり,東海豪雨とは異なる性質のものであると考えられる。_III_ 局地豪雨分布 図3は,名古屋市瑞穂区で発生した集中豪雨時の降水量分布を表したものである。降水がみられたのは市域中心部の熱田区から昭和区,瑞穂区,天白区,および名東区であるが,特に降水量が多かったのは瑞穂区で,時間雨量90mmを上回った。名古屋市の排水処理機能は,時間雨量50mm対応であるため,豪雨による浸水被害が相次いだ。_IV_ 豪雨発生時の局地的な風の流れそこで,名古屋市を始めとする愛知県管轄の大気汚染常時測定局の1時間値のデータを使用して風の流れ場を解析した結果,遠州灘からの南東風の進入(図4-a),および北西部からの北東風が名古屋市付近で収束し,さらにヒートローの影響と思われる反時計回りの渦が確認できた(図4-b)。集中豪雨が発生した瑞穂区は,渦の北東付近にあたり,水蒸気の供給量が豊富であったことを裏付けるものである。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205692732032
  • NII論文ID
    130007015291
  • DOI
    10.14866/ajg.2006s.0.112.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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