京都市西陣地区における京町家の更新とその要因分析
書誌事項
- タイトル別名
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- Analysis of the decrease in Kyomachiya townhouses in Nishijin, Kyoto City
説明
<BR>I.はじめに<BR> 京町家とは、京都において主に明治期から第二次世界大戦までに建築された伝統的な建築様式に基づく低層の木造建築物である。京都市では、第2次世界大戦による被害が軽微であったため、戦前に建築された京町家が、都心部に多く残存していた。しかし、現代の都市計画法の中では、京町家は建築基準法上不適格とされ、建物の老朽化や相続税の問題、現代的な生活をする上での不便さから、主に取り壊しの対象とみなされてきた。その結果、多くの京町家が取り壊され、職住が近接した住居機能や歴史的景観が失われてきた。しかし、1990年代以降、京都市やNPOによる京町家保全や新景観法の施行にみられるように、京町家の存在が見直され、保全の対象とみなされるようになった。<BR> そこで、本研究では、京都の歴史的な中心市街の1つであった西陣地区を対象に、京町家の残存と別用途への更新をめぐる過程およびその規定要因を統計的に把握し考察する。<BR> <BR> II.研究方法<BR> 本研究では、1995-6年・1998年(第I期調査)、2003-4年(第II期調査)にかけて、京都市都心部を対象に京都市や市民ボランティア、立命館大学によって実施された京町家の外観調査データを使用する。そのうち西陣地区に立地する約2,800軒を分析対象とした。これらの町家調査データと土地利用・道路・法規制などのGISデータとを組み合わせ、京町家の更新を既定する要因を、京町家の外観特性、立地する場所の法規制、周辺環境などとの統計的関係から検討した。<BR> <BR> III.京町家の更新過程<BR> 第I期調査から第II期調査までに、西陣地区全体で、約2,800軒の京町家のうち400軒が建て替えられた。カーネル密度推定をもとに西陣地区内部の減少率を求めた結果、今出川通と中立売通沿いで30%を超える減少率がみられた。現在の京町家の残存と減少率を照合すると、京町家が存続する地域と急速に失われていく地域とに二極化する傾向が確認された。<BR> また、建て替え後の土地利用を集計した結果、約半数が一般住宅、約2割が共同住宅・オフィス・商業ビルへの建て替えであった。<BR> <BR> IV.要因分析<BR> 京町家の外観特性(建物状態や空家、長屋など)と法規制、道路からの距離、近傍の土地利用を説明変数とし、以下に示すロジスティック回帰分析を行った。<BR> まず、ステップワイズ法による二項ロジスティック回帰分析を行い、京町家の建て替えの有無を規定する要因の抽出を行った。その結果、長屋建ての京町家や良好な建物状態にある京町家ほど存続しやすいことがわかった。また多くの京町家が残存する地域や裏敷地に立地する京町家も存続しやすいことが示唆された。<BR> さらに、多項ロジスティック回帰分析を用いて、建て替え後の土地利用を規定する要因を抽出した。その結果、一般住宅に建て替えられる京町家と比較して、主要道路沿いで大規模な敷地を有する京町家は共同住宅・オフィス・商業ビルに、道路に面した京町家は露天駐車場に、工業用地が密集した地域に立地する京町家は空地・売地・造成地に変化しやすい。これは、おおむね付け値地代を反映した結果と考えられる。<BR> <BR> V.おわりに<BR> 本研究では、京町家の残存と他用途への更新をめぐる過程と規定要因を明らかにした。西陣地区では、京町家が良好に維持管理され残存する地域と建物状態が悪いまま残存する地域、維持管理されているが建て替えが進む地域がみられた。また京町家は、付け値地代に応じて他の用途へと更新されるが、西陣地区では約半数が一般住宅へと建て替えられた。おそらく京町家の居住者は、老朽化した京町家を建て替え、西陣地区に住み続けていると考えられる。<BR> 今後、京町家の減少が現状のペースで進行するならば、約30年後には現在の約半数にまで京町家の軒数が減少すると予測される。本研究で得られた京町家の更新過程とその要因に関する知見をもとに、今後の京町家の空間的変容を予測できる。
収録刊行物
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- 日本地理学会発表要旨集
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日本地理学会発表要旨集 2008s (0), 101-101, 2008
公益社団法人 日本地理学会
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205692763520
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- NII論文ID
- 130007015314
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可