衛星画像を用いたバングラデシュ・ブラマプトラ川の河道変遷解析

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  • Analysis of channel changes in the Brahmaputra River in Bangladesh using remote sensing images

抄録

1. 研究の意義<BR>バングラデシュの国土の大半は,ガンジス・ブラマプトラの二大河川によって形成されたデルタ地帯に位置するため,地形が非常に平坦である.また,雨季と乾季が明瞭なモンスーン地帯に位置するために,河川の流量の年変化が大きい.雨季には毎年のように洪水が発生し,大洪水の際には国土の約70%が浸水する.<BR>ブラマプトラ川では網状流が発達しており,その流路は年々変化している.また,1950年に上流域で大地震が生じて多量の土砂が河川に供給された結果,ブラマプトラ川の河道が不安定化したと考えられている.しかし,ブラマプトラ川の河道変遷を詳細に検討した研究は少ない.本研究では,衛星画像とGISを活用し,従来よりも詳細な河道変遷過程の解析を試みた.ブラマプトラ川の中州は乾季における人々の居住場所でもあるため,河道変遷解析の結果は洪水対策の基礎情報としても重要である.<BR><BR>2. データおよび方法<BR>1973,76,78,80,84,87,89,92,94,96,98,99の12年について,バングラデシュ領域内のブラマプトラ川に沿う乾季のランドサット画像を入手した.このうち1987年以前の画像はMSS(解像度80 m),1989年以降の画像はTM(解像度30 m)である.教師つき分類を用いて,「川原」(現在の氾濫原と流路を含む範囲)の土地被覆を水面,砂地,草地に区分した.次に,解像度が異なるデータを同一の基準で処理するために,辺長240 mのグリッド内で最大の面積を占める土地被覆を判定し,解像度240 mのデータを作成した.<BR>対象地域のブラマプトラ川は,ほぼ南北方向に流下しているため,上記のグリッドのうち南北方向の座標が等しいものを連ねた帯状の範囲を「区間」と定義し,得られた833個の区間ごとに土地被覆データを集計した.<BR><BR>3. 川原の幅の時系列変化<BR>1973年以降,川原の区間のうち当初は幅が狭かった部分が側方侵食によって拡幅した.とくに,1980年代中盤から1990年代前半にかけて急激な拡幅が生じたために,川原の左岸と右岸を連ねた線が直線的になった.その結果,全区間における川原の平均幅は8.3 kmから11.7 kmに増加し,川原の最大幅と最小幅の差は12.2 kmから8.9 kmに減少した.<BR><BR>4. 流路の特徴の時系列変化<BR>全年次のデータを解析したところ,川原の幅が約7 kmよりも広いと幅が500 m程度の狭い流路が多く形成されるが,川原の幅が7 km未満になると幅が1200 mを上回る広い流路が生じやすいことが判明した.これは,川原がある程度狭くなると流路の分岐が制限されることを示す.前記のように,狭い川原の区間は1980年代に減少し,1990年代には幅が7 km未満の川原がほとんどなくなった.これにともない,幅の広い流路の分布も減少した.<BR>1970年代には,各区間における川原の幅と流路の数との間に比較的明瞭な正の相関が存在した.しかし,川原の狭い区間が急激に拡幅した1980年代には,流路の分布が複雑に変動し,上記の正の相関が不明瞭になった.その後,川原の侵食が沈静化すると,河川が川原の幅に見合った分岐をするようになり,川原の幅と流路数との正の相関が再び明瞭になった.<BR><BR>5. 草地の分布の時系列変化<BR>土地が相対的に安定していたことを示す草地の割合は,川原の幅が元々大きかった区間で全期間を通じて高く,安定な中州を形成可能な空間の存在を反映する.一方,川原の幅が新たに増加した区間では,流路が不安定な時期を経たために,川原の幅が大きくても草地の割合が低い.<BR><BR>6. 結論<BR>ブラマプトラ川では,1980年代から1990年代前半にかけて,川原の区間のうち元々は幅が狭かった部分が顕著に拡幅し,川原の中における流路の分布も不安定になった.しかし,川原の拡幅が沈静化した1990年代後半には,流路の幅と数が川原の幅に対応した一定の傾向を示すようになり,河川が新しい平衡状態に達したと考えられる.

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  • CRID
    1390001205692849536
  • NII論文ID
    130007015388
  • DOI
    10.14866/ajg.2003f.0.142.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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