日本の扇状地の勾配を規定する地形,水理・土砂移動プロセス

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タイトル別名
  • Morphology, Hydraulic Process and Debris Transport Process as factors determining the Slopes of Japanese Alluvial Fans

抄録

_I_ はじめに<BR> 山地から流出する土砂の動態は沖積平野の発達を決定付ける重要なファクターであり,その理解は重要な課題である.一般に集水域の起伏比が大きいほど,また,集水域面積が小さいほど急勾配の扇状地が形成されることが良く知られており,扇状地の勾配と山地集水域の地形,地質,気候条件が関係していることが統計分析により明らかにされている(斉藤, 1985).しかし,集水域!)扇状地における水理・土砂移動プロセスは不明である.本研究では山地から流出する土砂の粒径や洪水流量によって扇状地勾配がどのように定められているのか,また集水域の特性によって扇状地に流出する礫の大きさがどのように定められているのか検討した.<BR><BR>_II_ 調査地域<BR> 北陸,姫川・松本盆地,琵琶湖周囲,讃岐平野の4地域合計18の扇状地を研究対象とした.これらの扇状地の集水域面積と扇状地勾配の関係を示したのが図1である.集水域面積と扇状地勾配には負の相関があるが,同程度の集水域面積で比較すると,北陸,姫川・松本盆地の扇状地は琵琶湖周囲,讃岐平野の扇状地よりも勾配が大きい. 洪水流量と礫の大きさによって扇状地の勾配がどのように異なるのか比較検討を行う上で,このように集水域面積と勾配が大きく異なる扇状地を対象とするのが適当であると考えた.<BR><BR>_III_ 研究方法<BR> 扇状地堆積物の調査を行い,扇状地を構成する礫の大きさを代表礫径Drと減衰率Rdで表現した.前面を侵食された扇状地は扇頂から扇端までの平均勾配が大きくなるため,扇状地の縦断面形を評価し,直線に近い縦断面を持つ上流側3分の2区間の平均勾配を扇状地勾配Sf として計測を行った. また,多目的ダム管理年報のダム流入量データをもとに各地域の確率洪水比流量を計算した.<BR><BR>_IV_ 結果<BR> 同程度の集水域面積で比較すると,北陸,姫川・松本盆地の扇状地のほうが琵琶湖周囲,讃岐平野の扇状地よりも急勾配であることの理由として,前者の地域では後者の地域と比較して概して山地から流出する礫が大きいことがわかった.また,再現期間が数年程度の確率洪水比流量では北陸,姫川・松本盆地,琵琶湖周囲,讃岐平野の各地域において大きな差は見られないが,再現期間が数十年と大きいとき,琵琶湖周囲,讃岐平野の確率洪水比流量が北陸地方,姫川・松本盆地の確率洪水比流量を大きく上まわり,各地域における扇状地勾配の差異を良く説明できることがわかった.扇頂上流の河床勾配Suと洪水流量Qを用いて表現した土砂運搬能の指標が代表礫径Drと良い相関を示し,山地から流出する礫の大きさがふるいわけにより規定されていることが明らかになった.<BR><BR>_V_ 考察<BR> 起伏比が大きくなると,集水域の河床勾配が大きくなり,扇状地に流出する礫が大きくなるため,扇状地の勾配は大きくなる.この結果として起伏比と扇状地勾配に正の相関があると考えられる.起伏比が一定で集水域面積が大きくなると,洪水流量が増大し,集水域から大きな礫が流出する.そのため,扇状地勾配は必ずしも小さくならない.しかし,集水域面積は起伏比と負の相関を持つため,結果としてに扇状地勾配と負の相関を持つと考えられる.<BR><BR>引用文献<BR>斉藤享治(1985): 扇状地の特性を形成する因子. 東北地理, 37, 43-60

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205692903168
  • NII論文ID
    130007015490
  • DOI
    10.14866/ajg.2005s.0.166.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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