人工林の荒廃が洪水・河川環境に及ぼす影響

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • The effect of forest devastation on flooding and environmental issues

抄録

1. はじめに<br> 戦後の拡大造林ブームにより植裁されたスギ・ヒノキ等の人工林が徐伐・間伐の時期を迎えており,適切な施業・管理が強く望まれる時期である.しかし,林業労働力の不足,材価の低迷のため,適切に管理されずに放置され荒廃した林分が年々増大している.また,ピーク流出水量が増大するために下流域に洪水を引き起こす可能性が指摘され,さらに,渇水期の流出水量が減少すると予想されている(図1)。<br>従来の研究によれば,人工林,特にヒノキ一斉林では,樹冠の閉鎖が進むと下層植生が消失し,浸透能が低下して降雨時に容易に地表流が発生し土壌の表面侵食が起こることが知られている。しかしながら,従来の浸透能測定は,主に円筒管型の浸透計が用いられており,クラスト形成が指摘されている裸地化した林床における浸透能を正確に表現していない恐れがある(湯川・恩田,1995)。<br>そこで本研究では,樹幹上から散水をする浸透計を用い林内における浸透能の把握をすることを目的に研究を行った。<br>2. 調査地域および方法<br> 調査斜面は,三重県一志郡白山町にある三重県林業技術センター実習林内の一斜面である。この実習林の内部には,様々な林相の施業がなされている。この中の林齢約30年のヒノキ人工植栽地に,間伐を行っていない区画があり,林床は裸地化している。<br> このヒノキ林のほぼ中央上部に,仮設やぐら(高さ約12m)を建てた。このやぐらの上部は林冠上まで達しており,その四隅にスプリンクラーを設置した。このスプリンクラーにホースをつなぎ,林道からポンプで水を供給することにより,林冠上からの人工散水を可能とした。<br>実験に使用する水は,調査斜面の下流の沢水を用いた。この水を4トン積みの散水車を用いて,調査斜面近くの林道まで運搬した。その後,散水車から水を容積150Lの容器に移し,そこからポンプで散水タワーに導いた。<br>3. 結果および考察<br> 平均降雨強度45mmの人工降雨を3回,林冠上から散水した結果,浸透能が平均31.2mmと極めて低い値を示した。この値は,霧雨型の浸透試験結果460mm/h,冠水型試験結果354mm/hと比較しても極めて低い値を示す。したがって,荒廃した森林の洪水に及ぼす効果を定量化するためには,大型の散水装置を用いて浸透能を定量化するとともに,流域のプロットスケール,小流域河川水の流出分離に基づく表面流出成分の把握が必要となろう。<br><br>文献:<br>(1) 湯川・恩田 (1995):. 日本林学会誌, 77(3), 224-231.<br>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205693074048
  • NII論文ID
    130007015774
  • DOI
    10.14866/ajg.2004s.0.141.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ