火山灰層序からみた立川断層過去200万年間の活動
書誌事項
- タイトル別名
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- Tephrochronological study on the activity of Tachikawa Fault during Quaternary, Tokyo Metropolitan area, central Japan
説明
東京西部の武蔵野台地を北西-南東方向に21km延びる立川断層は,将来東京西部において直下型地震を起こす可能性を持つことからその活動が注目されている活断層である.第四紀後期における立川断層の活動は,北東側隆起,最大平均変位速度0.36m/103年,単位変位量約1.8m,発生する地震のマグニチュード約7.1,再来周期が約5,000年であると推定されている(山崎,1978).その最新活動期は東京都(2000)により1,900?1,500年前とされていたが,最近になり14,000?7,300年前(宮下ほか,2005)という異なる見解が出されている. 一方,立川断層の長期におよぶ活動については,16Maの日本海開裂頃には北東側沈降の正断層であり現在と異なる変位様式をもっていたことや,北東側隆起の逆断層である現在の変位様式は2Ma以降,おそらく中期更新世に開始ないしは活動度の加速があったと考えられている(山崎,2006).この様に立川断層の長期的活動については若干の議論があるが,その実体は充分に明らかにされていない.詳細を明らかにするには,立川断層沿いの武蔵野台地西部地下や狭山丘陵において断層変位を受けた堆積物の詳細を明らかにする必要がある.今回,旧東京都土木技術研究所(現,東京都土木技術センター)が掘削したコアの再調査と狭山丘陵における野外調査を行ない,テフラの認定とそれに基づく堆積物の年代を再検討し,立川断層の長期的な活動史を考察した. 検討したコアは,武蔵野台地西部,武蔵村山市三ツ木地区において1998年に採取された立川断層を挟む深度115mの 2本のボーリングコア(MTB1とMTB2とする)(東京都,1999)と両地点のほぼ中間で採取された深度703.4mの武蔵村山コア(川島・川合,1980)である.これらコアに基づくと,地下地質は上位から関東ローム層,立川面構成礫層,下総・相模層群相当礫層,礫・砂・シルト・泥炭などの互層からなる仏子層相当層ないしは上総層群相当層である.堆積物中に含まれるテフラとして,断層南西側のMTB1コアから29枚のテフラ(上位からMTB1-1,MTB1-2...とする.他のコアも同様),北東側のMTB2コアから30枚のテフラ,中間の武蔵村山コアから39枚のテフラが検出された. これらテフラの記載岩石学的特性から,MTB1-22とMM-12は近傍の狭山丘陵で見出されている狭山ガラス質テフラ層(SYG;正田ほか,2005,1.7Ma),MTB1-26は恵比須峠福田テフラ(Ebs-Fkd;1.70Ma),MM-18は上総層群黄和田層のKd44,MTB2-26は上総層群大原層のHSC,すなわち東北仙岩地熱地域を給源とする玉川R4テフラ(Tmg-R4;鈴木・中山,2006;2.0Ma)に対比できる.また,武蔵村山コアで検出されたMM-21.1,-22,-24の3枚組のテフラが北東側MTB2コアと狭山丘陵西端部の箱根ヶ崎の地表部で見出された. 以上のテフラ認定に基づくと,約2Ma降下堆積したMM-21.1,-22,-24テフラとその前後の堆積物には,MTB2コアと武蔵村山コアの間で北東側約100mの隆起を示唆する変位が認められる.また,武蔵村山コアとMTB1コアの間では1.7MaのSYG北東側へ約20m隆起する変位が認められる.武蔵村山コアの掘削地点はほぼ撓曲崖上に位置し,他の2本は撓曲崖を挟むように位置する.これらのことから,立川断層の三ツ木付近における過去200万年間の累積変位量は120m程度と見積もられ,これまでの推定量(山崎,1978,2006)と大きくは異ならない.
収録刊行物
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- 日本地理学会発表要旨集
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日本地理学会発表要旨集 2006f (0), 12-12, 2006
公益社団法人 日本地理学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205693091840
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- NII論文ID
- 130007015806
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可