スポット商品(企画販売商品)の調達から見た食品スーパーのネットワーク作り

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タイトル別名
  • The Network of Stocking Several Spot Commodities in Food Supermarkets

抄録

はじめに:日本のスーパーは、生鮮品、日配品の取り扱いが多いことが特徴である。特に、食品スーパーは、生鮮品や日配品の鮮度管理、品揃えが販売戦略上で重要となっており、日本の流通システムの中で日本人の食を支える重要な役割を果たしている。欧米のスーパーでは、鮮魚の取り扱いが少なく、野菜類、肉類が中心であり、レディミールなど加工された食料品の取り扱いも多くなっている。東南アジア諸国では、スーパーにおける生鮮品の取り扱いは消極的となっているが、多くの消費者は市場(マーケット)で生鮮品、日配品を購入することが多いためであり、一部の富裕層を除いてスーパーで食料品を購入する習慣があまりみられない。このように世界的に見ても、生鮮品と日配品を積極的に取り扱っていて、多店舗展開してチェーンオペレーションを展開しているのは、日本のスーパーの特徴といえよう。さらに日本のスーパーは、大量に取り扱う定番商品を販売しているだけではない。1980年代以降、全国各地の大手食品スーパーでは、スポット商品(企画販売商品)を積極的に展開することによって、消費者にアピールするようになっている。さまざまな販売イベントを展開することによって集客力を高めようとしているのである。また、日本のスーパーは新聞折り込みチラシが充実しており、消費者の買い物行動に大きな影響を与えている。このような食品スーパーの販売戦略の中、消費者の生活が提案型の販売に左右されているともいえるのである。 そこで本研究では、日本の食品スーパーのスポット販売に注目し、その企画立案、宣伝広告、商品調達について検討していきたい。特に、生産地や産地市場とネットワークを構築して、販売企画を立案している食品スーパーのバイヤーの行動に着目したいと考える。<BR> 従来の研究:従来の地理学研究において、食品スーパーの販売戦略や宣伝広告に着目した研究はほとんど見られないが、スーパーの調達システムに着目した研究は多い。それらの研究で明らかになったのは、主に_丸1_配送の多頻度小口化の中で効率的なシステムをどのように構築されているのか、_丸2_配送ルートのあり方を検討し、多店舗展開している中でいかに定時性を確保しているのか、_丸3_総菜などの商品加工について、インストア加工方式か集中加工方式かの選択はどのように行われているのか、の3点である。 イギリスの流通業に着目した研究では、食品小売業界の上位集中化の中で、スーパーが自ら全国的な配送システムを構築するとともに、レディミールなどプライベートブランド商品をメーカーと共同開発し、品揃えの差別化を図っていることが検討されている。スーパーとメーカーとの関係についても検討されており、イギリスでは、比較的長期的な契約の元に協同的に商品開発がなされるのに対し、アメリカでは短期契約が中心で、より安価で魅力的な商品開発がされるメーカーへ切り替えることも行われることが指摘されている。このように、各国の経済環境によって商品開発、販売のあり方に違いがあることも指摘されている。 このように従来の研究では、経済地理学的な立場で配送システム、製版統合について検討されており、特に、さまざまな施設立地とコスト削減との関係について分析してきた。しかし、現在のスーパーにおける食品販売は、イベントのはたす役割が大きくなっているのではないか。特に、バイヤーによる産地開拓、商品ノウハウの蓄積がそれぞれの食品スーパーの販売力に大きくかかわる。食品スーパーは、商品調達のためにどのようなネットワークを構築しているのかを検討する必要があり、バイヤーの行動を分析しなければならない。<BR> 調査内容:本研究では、東北地方に展開する食品スーパーを事例に検討する。主な内容は、1)スーパーへの聞き取りや折り込みチラシの収集から、スポット販売の内容と展開について、2)それぞれのスポット販売を実施するに当たって、どのようなスケジュールを組み、バイヤーが行動したのか、の2点から検討したいと考える。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205693123200
  • NII論文ID
    130007015870
  • DOI
    10.14866/ajg.2006f.0.104.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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