大規模網状砂床河川の流路形状変化_-_GISとリモートセンシングによるバングラデシュ,ブラマプトラ川の研究

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  • Change in channel morphology of a large sandy braided river: GIS and remote sensing analysis for the Brahmaputra, Bangladesh

抄録

1. はじめに<br>高木ほか(2003)は,1967~2002年の14時期における乾季のランドサット画像およびCorona衛星写真を利用し,ブラマプトラ川の「川原」(現氾濫原と流路からなる範囲)における水面,砂地,草地の分布を表す解像度240 mのグリッド・データを作成した.次に,そのデータをGISに入力して解析した.結果は以下の通りである.調査期間に平均川原幅は増加傾向にあり,特に1980年代後半から1990年代前半には河道幅が狭い部位が急激に拡幅した.流路数は基本的に川原幅と正の相関を持つが,拡幅期には相関が不明瞭になった.また,水面と砂地のセルを不安定,草地と川原外のセルを安定とみなすと,安定化した区間と不安定化した区間が一定の周期で交互に分布し,それらの区間が時間とともに下流に移動する傾向がみられたが,川原の拡幅が終了した1990年代後半以降,上記の移動は不明瞭になった.すなわち,安定化・不安定化区間の移動は河原の幅の変化と連動している.また1990年代後半以降には河川が動的平衡に達したと推定された.本発表では,高木ほか(2003)のデータを用いて新たに行った河道の安定度に関する定量的解析の結果を報告する.<br><br>2. 河道の安定度の変化と最大洪水との関係<br>ある期間に河床が安定化した程度(DSI)は次式で表せる.<br><br>ここで,Sは不安定から安定に転じたセルの数,Uは安定から不安定に転じたセルの数,Aはセルの総数である.河道の不安定化は,大規模な洪水でもたらされる可能性が高いが、このことを検証するために,画像が撮影された間の期間における最大洪水とその前後を含む21日間の流量の総和と,その期間のDSIとの相関を調べた.その結果,2期間(1967-73,1980-84)を除くと両者には明瞭な負の相関が見られた.また,上記の例外的な2期間は他の期間よりも長いために,不安定と安定との相互変化が複数回生じた可能性が高く,期間内の最大洪水の代表性も低くなるため,他の期間とは傾向が異なることは妥当といえる.以上から,洪水の規模が大きいと河道の不安定化が顕著になることが裏付けられた.<br><br>3. 空間自己相関を用いた安定度変化の分布解析<br>各期間について,安定化・不安定化したセルと,安定度に変化のないセルの分布に見られる空間的自己相関(spatial autocorrelation)を,下記のMoranの式(Moran, 1950; 野上ほか, 2001)によって定量化した.<br><br>ここで,Nはセルの数,ijはセル番号,Xiはセルの値(種類),Aijはセルiの近接度を意味する.近接度は近接する前後左右4個のセルを1,それ以外を0とした.一般に,Iが1に近ければ類似の属性を持つセルが近接しており,Iが-1に近ければ異質なセルが近接しているといえる.<br>調査地域を14のセグメントにほぼ等分し,各セグメントのIを時期ごとに計算した.その結果,川原幅が大きく変化した1980年代後半_から_1990年代前半には,Iの値がセグメントごとに顕著に異なっていたが,1990年代後半以降には,Iの値が全セグメントでほぼ共通となったことが判明した.また,後者と類似の状況は1980年代前半にも一時的に生じていた.<br>上記のIの変動と,高木ほか(2003)との検討結果との対応から,河川が動的平衡に近づくとIが全域でほぼ等しくなると推定される.従来,空間自己相関の指標は土地利用分布などの解析にしばしば取り入れられてきたが,地形学への適用例はほとんどなかった.上記の結果は,空間自己相関の指標が網状河川の複雑な形状とその変化の解析に有用なことを示唆している.<br><br>4. 河道変化にみられるステージ<br>以上の検討と河原幅の変化に基づき,1967~2002年におけるブラマプトラ川の河道の状態を,_I_:1967-73,_II_:1976-80,_III_:1984-92,_IV_:1994-2002の4つのステージに分類した._II_と_IV_は動的平衡状態,_I_と_III_は平衡状態へと移行する期間とみなされ,ブラマプトラ川の状態は断続的に変化していることがわかった.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205693211520
  • NII論文ID
    130007016048
  • DOI
    10.14866/ajg.2004s.0.155.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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