石黒信由の測量絵図と実測データによる復元地図

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  • Comparison of Measured map Drawned by Nobuyoshi ISHIKURO and Restored maps Based on Measurement Data

抄録

1 金沢町往還筋測量 越中国射水郡高木村の和算家・測量家石黒信由(1760~1836)は、文政2年(1819)に加賀藩から越中・加賀・能登の測量を命じられ7年かけて全域の絵図を作製した。このとき金沢町における測量の実測値を記した分間野帳(『金沢町道程しらへ帳』)と、それをもとに信由が作った縮尺百間1寸(1/6000)の「金沢町往還筋分間絵図」が現存している。測量は同3年(1820)10月に2日間かけて行われ、その総距離は5,572間(10,131m)、134区間で1区間当たり平均41間6(76m)である。この測量結果から地図を復元し、往還筋分間絵図や現在の地図と比較することで、信由の測量方法の特徴及び絵図の誤差を確認することができた。なお、金沢町では同5年(1822)から加賀藩士遠藤高?mを中心としたグループが精度の高い城下町の測量を行い「金沢十九枚御絵図」を作製したが、渡辺はすでにこの測量結果から地図の復元を行っており、この復元地図も比較の対象とした。2 地図の復元と測量絵図の比較 分間野帳の実測値から地図を復元する方法としてEXCELで座標ファイルを作成し、それをCADに読み込ませる方法を行った(渡辺誠他2006)。作成した図形はPDFファイルにし、それをTiff画像に変換することにより測量絵図や現在の地図と比較できる。「往還筋分間絵図」と復元地図を比較すると、北西部の宮腰往来へ向かう部分で合致しないところがある。遠藤の「十九枚御絵図」(復元)や現在の地図で比べると、測量結果が正しく分間絵図が誤りであることがわかり、作図過程で誤差が生じていることが確認できる。次に復元地図と「十九枚御絵図」(復元)・現在の地図を比較すると、浅野川左岸や材木町~天神町(南東部)でズレが見られるものの全般的によく一致していることがわかる。坂の多い金沢町の分間野帳には勾配に関する記録はないが、信由は勾配の計算を行っていたと考えられる。また、真北のズレは1.6度で補正したが、これも遠藤が測定した数値と同じである。このように、CAD座標ファイルを用いて石黒信由の実測図の精度を確認したが、今後GISによる分析結果とあわせ、より詳細な検証が必要であろう。付記 本報告は、平成21~24年度科学研究費補助金・基盤研究(B)「近世実測図を活用した古地図GIS解析法の構築」(研究代表者 平井松午、研究課題番号21320158)によるものである。

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  • CRID
    1390001205693214848
  • NII論文ID
    130007016055
  • DOI
    10.14866/ajg.2011f.0.100063.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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