「平成の大合併」をめぐる小人口町村の認識

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  • Perceptions of municipalities with small populations for Heisei municipal amalgamation policy

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1.はじめに<br> 今回の平成の大合併の動きを加速させたのは紛れもなく、合併しない小人口町村に対する「ムチ」の導入、特に地方交付税政策の転換にあった。当時の各種自治体調査の結果が示すように、合併に対して最も懐疑的な姿勢を取っていた小人口町村に対して1998年以降、国は国勢調査人口4000人未満の市町村を狙い打ちにした地方交付税の削減策を実施した。以後、小人口町村の財政状況は急激に悪化し、2002年からはじまった小人口町村に対する地方交付税削減策の第二段、さらに小泉政権の「骨太の改革」の中で地方交付税改革を含む「三位一体の改革」が打ち出され、もはや抗せざる動きとして小人口町村を市町村合併の検討へと突き動かしていった。1998年以降の動きは、全国町村会が「小規模町村バッシング」と呼ぶほどに激しい、矢継ぎ早の施策展開であった。合併特例法による特例措置の適用期間の期限が2005年3月末に設定され、市町村合併に向けた事務的手続におおよそ1年程度の時間を要すると考えられているため現在、数多くの小人口町村は市町村合併そしてその枠組に関する意志決定に迫られている。報告者は主として財政問題の観点から、小人口町村の市町村合併政策等に関する認識の把握を目的としてアンケート調査を実施した。<br><br>2. 調査の概要<br> 本アンケート調査は2003年11月に郵送法によって実施した(回答期限12月20日)。調査対象は2000年国勢調査人口において人口が4,000人未満の全国504町村のうち、2003年11月までに合併によって消滅した15町村を除く489町村であり、回答者として各町村の財政担当の係長(もしくはこれに準じる人)を指定した。回答町村数は373、回収率は76.3_%_に達した。以下に示すように、各町村にとって極めて微妙な質問を設けているため、町村名の公表は行わないことを条件としており、また電話等による回答依頼 は行っていない。<br><br>3. 調査結果の概要<br> 2003年11_から_12月現在において「合併が決定している」町村と「独立町村の維持が決定している」町村は共に9.1_%_である。残る町村のうち、「協議会を設け合併の方向で進んでいる」町村が56.8_%_、「協議会を設けているが事態は流動的で合併しない可能性もある」とした町村が18.5_%_であった(この他、無効回答や協議会を設けない形での検討を行っている等の理由により無回答としたものなどが6.5_%_ある)。<br> 調査対象町村が「このままでは財政的にやっていけない」という認識を示すようになったのは2000年から2001年にかけてのことであり(2000年:21.7_%_、2001年32.4_%_)、法定および任意の合併協議会が2002年に入って急増した事実と一致する。<br> 「貴町村の属する都道府県の合併に対する働きかけは他都道府県に比べてどのようなものだったのか」 という項目(1. 積極的 ←→ 5. 消極的)について、回答町村数が10以上あった13道県の平均値を見てみると広島県(1.167)、山梨県(1.364)を筆頭に、合併に積極的なスタンスをとった県と長野県(4.379)、北海道(3.767)、高知(3.667)という、合併に消極的なスタンスをとった3道県とに二極化している。<br> 合併積極県ではいち早く小人口町村を交えた市町村合併が成立・決定しており、合併市町村に対する「優遇策の実施見込み」についても高い期待を寄せていることから、都道府県のコミットメントが小人口町村の意志決定に有為な影響を与えていることが伺える。逆に合併消極県では「地方交付税削減策がなければどうしたか」という設問に対して「合併の検討はしなかった」と回答した町村の比率が平均を上回り(特に北海道では6割以上)、そもそも地理的条件や歴史的経緯から合併が困難な都道府県であったものと考えられる。<br><br>この他、発表時間の許す範囲でアンケート調査で得られた特徴的な知見を紹介していきたい。<br>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205693500160
  • NII論文ID
    10012721227
  • NII書誌ID
    AA1115859X
  • DOI
    10.14866/ajg.2004s.0.96.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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