経済成長を遂げるインドの首都デリーにおける農産物供給

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タイトル別名
  • Agricultural Supply System of Delhi under the Economic Growth in India

抄録

目的 本研究の目的は経済成長の著しいインドの首都デリーの農産物供給体系を明らかにすることである。中産階級の台頭が指摘されて久しいインドの首都は,人口の増加のみならず消費水準の向上も急である。このような環境の中,拡大し続ける都市の食料需要を支えるためにいかなる農産物供給体系が機能しているのかを明らかにすることは途上国の大都市を考える上で重要な意味を持つと考える。その際,本報告では特に,農産物卸売市場を通じた検討に主眼をおいた。主穀類や青果物を含めた農産物の供給は食料供給の中でも最も基本的な位置にあり,卸売市場は農産物の生産と消費をつなぐ上で中心的な役割を果たしているからである。<br>方法 2003年12月にデリーを訪れ,市内の農産物供給の中枢を担う9つの農産物卸売市場で聞き取り調査を行うとともに入荷データを収集した。また,これらの卸売市場は各々の農産物市場委員会(Agricultural Produce Marketing Committee)によって運営されており,それらを統括するデリー農産物マーケティングボード(Delhi Agricultural Marketing Board),さらにデリー農業マーケティング理事会(Directorate of Agricultural Marketing)でも聞き取りを行った。加えて全国レベルでの青果物需給に関しては国立園芸局(National Horticurture Board)の資料を利用した。<br>デリーの農産物市場 デリーの主要農産物市場は9つあり,最大の規模を擁するアーザードプル青果物卸売市場を始めとし,穀物市場としてナレラとナジャフガル,トランスヤムナ地区の農産物全般を取り扱うサハドラ,デリー西部の青果物を扱うケショプル,鮮魚と鶏を扱うジャッキーラ,飼料を扱うマンゴルプリ,花卉を扱うメヘルーリ,乳製品を扱うバグディワルがある。また,アーザードプル市場の下位市場としてデリー東部をカバーするオークラヤードとバナナ専門ヤードの2つが機能している。<br>結論 取扱量の増加は穀物類よりも青果物において顕著であり,アーザードプル市場のそれはこの10年間で3割以上増加した。<br> 取扱量の増加と効率化を図るために,拡大を前提にした移転や市場の新設がこの数年で大きく進展していることが明らかになった。この5年でナレラ市場とサハドラ市場が新たなヤードを新設・移転したのを始めとし,ケショプル市場がアーザードプル市場の下位ヤードから単独の市場として独立した。さらに,1997年にメヘルーリ市場が,1998年にバグディワル市場が新たに設置されたことなどである。<br> 取扱量の拡大にともない,入荷地にも変動が見られた。特に従来的にデリー近郊からの入荷が中心であった青果物の遠距離からの入荷が認められるようになっている。その過程で,高い生産性を誇る特定の産地が台頭していることも確認できた。特にマハーラーシュトラ州のナーシクは,トマト,キャベツ,カリフラワーを中心とした野菜類の一大出荷拠点となっている。こうした大消費地への出荷を担う特定産地の成長という構図は,1980,90年代のわが国において確認された野菜流動体系の特徴と共通するものでもある。<br>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205693522432
  • NII論文ID
    130007016503
  • DOI
    10.14866/ajg.2004s.0.41.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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