樹林構成と樹木被覆率による温度環境の違いについて
書誌事項
- タイトル別名
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- Difference of thermal environment with forest structure and percent tree cover
- A study on the green spaces in Nagareyama, Chiba Pref.
- 千葉県流山市の緑地を対象に
抄録
1.はじめに<BR> 夏季のヒートアイランド現象の緩和効果に着目した緑地配置やその利用が注目されている.森島(2009)によれば,一定以上の樹木被覆率の確保は,冬季において樹林内部の相対的な高温域の形成につながり,一年を通して気温緩和効果をもたらすことを示している.しかしながら,常緑樹・落葉樹の区別がなされていないなど.その要因について明らかにされているわけではない.樹木被覆率による気温緩和効果を活用するためには樹木の種類や配置による温度環境の違いをさらに詳しく調査する必要があると考えられる.そこで本研究では,常緑樹林内と落葉樹林内の温度環境の季節変化を明らかにし,また夏季における樹木被覆率による気温緩和効果について,実測から明らかにすることを目的とした.<BR><BR> 2.研究方法<BR> 観測は,千葉県流山市の市野谷の森と同市の総合運動公園で行われた.常緑樹林内と落葉樹林内の温度環境の季節変化を明らかにするために,市野谷の森(常緑樹林・落葉樹林)および近隣の裸地において冬季(2009年2月26日)から秋季(2009年11月5日)の期間の天空率・気温・地温を観測した. また,夏季における樹木被覆率に伴う気温緩和効果の違いについて明らかにするために,総合運動公園において移動観測を行い(2009年8月13日の11時・12時,21~22日の20時・0時・4時),その結果と樹木被覆率との対応関係を考察した.樹木被覆率は, 2007年の空中写真を用いてGIS上でトレースした樹木被覆境界ポリゴンと移動観測地点からのバッファー距離に基づいて計算した.<BR><BR> 3.結果と考察<BR> 冬季の天空率は当然のことながら常緑樹林内よりも落葉樹林内で高くなる.これに対応して夜間の気温は落葉樹林内より常緑樹林内で高温となった(図1).これは常緑樹林内の天空率が小さいことにより放射冷却が抑制されるためと考えられる.一方,日中においては落葉樹林内で相対的に高温となる.このことは,天空率が大きいことで日射による加熱が進んだものと考えられる.<BR> 樹木被覆率と気温の関係について散布図を作成した結果,夏季の明け方においては樹木被覆率が高いほど気温が相対的に高くなることが示された(図2).相関係数は0.44であり,必ずしも高い相関とは言えないが,先の結果と同様に放射冷却の抑制が,気温変化に重要な役割を果たしていることを示唆している.
収録刊行物
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- 日本地理学会発表要旨集
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日本地理学会発表要旨集 2010s (0), 230-230, 2010
公益社団法人 日本地理学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205693947264
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- NII論文ID
- 130007016938
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可