岡山県におけるヒラ、サッパ、コノシロの食習慣

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Dietary customs rerated to Chinese herring, Sardinella zunasi and Dotted gizzard shad

抄録

目的】分類学でのニシン上目ニシン目ニシン科という同一の科目に属するヒラ、サッパ、コノシロの食習慣に焦点をあてた。これらが、岡山県を主な利用地域として共通に食習慣が残っている要因について探った。 【方法】現代のデータは日本調理学会特別研究「魚類調査」(平成15・16年実施)より、大正から昭和初期は「日本食生活全集」より収集した。江戸時代のデータは、「翻刻江戸時代料理本集成」「日本調理秘伝集」などから、岡山県のデータは岡山藩の記録である「御後園諸事書留帳」などより収集した。 【結果】現代、ヒラとサッパは岡山県でその使用事例が少例見られたが、他県での利用はほとんどなかった。コノシロは全国的に利用がみられるが、最多利用されている県は岡山県であった。ヒラは煮物、サッパは酢を使用した料理、コノシロはすしを含めた酢を使用した料理が主たる料理であった。他県ではほとんど利用されていないこれらが岡山県で使用された理由を江戸時代文献より探った。容易に網にかかる三種は、岡山藩の特産物であった。さらに江戸時代には「下」の品格の魚と定義されながらも、後楽園での宴席の料理材料となった。ヒラは、田植え等の稲作行事に、サッパは秋の行事での記録が残る。つまり、江戸時代にはすでにこれらの食習慣が岡山で形成され、後楽園での行事に合わせ使用されていた。この習慣は、明治・大正・昭和と継承され、行事食、日常食、あるいは保存食として食べ継がれてきた。実際、昭和30年代頃まで、ヒラは田植え・代満ての行事食に使用され、サッパ・コノシロは祭りでのすし材料として使用された。容易に漁獲できることや、食味の類似性、保存の可能性、陸路や河路での運搬に耐えることが、これらの魚食文化が岡山県で現代まで継承されてきた理由と考える。  <br>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205693971712
  • NII論文ID
    130005264333
  • DOI
    10.11402/ajscs.28.0_183
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ