オーストラリア、フレーザー島におけるトラック荒廃の空間特性

DOI
  • 有馬 貴之
    首都大学東京・院 日本学術振興会特別研究員(DC)

書誌事項

タイトル別名
  • Spatial Characteristics of Track Degradation in Fraser Island, Australia

抄録

1. はじめに <BR> 未開地を保全する一手段でもある自然ツーリズムにおいて、4WDの利用が自然環境に負の影響を与えていることが報告されている。4WDの利用が多い自然環境下のひとつが海岸や砂丘地域であり、これらの自然環境を保全・管理するためには、国立公園全体のような大スケールの考察が必要である。 本発表では、砂丘地域における自然環境の利用と保全を踏まえ、オーストラリアのフレーザー島を事例に、4WD利用によるトラック荒廃の空間特性について明らかにする。 <BR> <BR> 2. 調査方法 <BR> 初めにフレーザー島の自然環境について主成分分析とクラスタ分析を行い、集約化し、フレーザー島を同様の地生態学的特徴をもった数種の自然地域に分類した。次に、現地で行ったトラック調査の結果を基に、トラック幅とトラック深の特性について考察する。なお、トラック調査は簡易的手法を用い、島内のシーニック・ロードと主要トラック上1km毎合計293地点で行った。最後に、トラックの荒廃度合を地生態学的側面と人間利用の側面から説明するために、重回帰分析を行った。それらの結果から、フレーザー島におけるトラック荒廃の空間特性を検討していく。 <BR> <BR> 3. 地生態学的地区分類 <BR> フレーザー島を任意の500m四方のメッシュで区切り、それぞれのメッシュに対し、8つの《砂丘システム(砂質と地形分類)の面積》、10つの《植生分類の面積》、それぞれのメッシュの中心から《クリーク(小河川)までの直線距離》、メッシュ内における《平均標高》、《平均斜度》の21の変数を与え、主成分分析を行った。その結果、固有値1以上の合計8つの成分が算出され、累積寄与率は66.1%となった。さらに主成分得点を元にk-means法によるクラスタ分析を行い、8つの地生態学的特徴を持ったクラスタを抽出した。それらは【マングローブ】、【東海岸】、【前砂丘】、【森林帯】、【ユーカリ林帯】、【湖】、【人工地】、【西海岸】である。 <BR> <BR> 4. トラックの現況 <BR> 現地調査では、トラック荒廃の度合を示す指標としてトラック幅とトラック深を計測した。計測地点のうち、トラック幅は最大で16.37m、最小で2.45mであった。一方、トラック深の最も浅いものは0m、最大深は1.69mであった。 一般に、トレイル荒廃では侵食が拡幅を引き起こすといわれているが、フレーザー島においては、そのような傾向はみられないと考えられた。 <BR> <BR> 5. トラック荒廃の空間特性 <BR>  前節で検討してきた地生態学的特徴(主成分得点)に、人間利用の側面を変数化した値を加え、トラック幅、もしくはトラック深を目的変数に、地生態学的特徴と人間利用の変数を説明変数にした重回帰分析(ステップワイズ法)を行った。その結果、トラック幅に対しては『過去利用によるトラック改変の有無』が大きく寄与していることが明らかとなった。一方、トラック深に対しては様々な地生態学的側面や人間利用、特に観光利用による側面が大きく寄与していた。  最後に、地生態学的クラスタ別に、重回帰分析を行ったところ、トラック幅に対してはどの自然クラスタにおいても上記と同様に『過去利用によるトラック改変の有無』が大きく影響し(表1)、トラック深に対しては自然クラスタ別に特徴的な要因の存在が確認された(表2)。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205694190976
  • NII論文ID
    130007017242
  • DOI
    10.14866/ajg.2010f.0.117.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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