都心とその周辺における人口変動

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タイトル別名
  • Population Change in and around the Central Business District
  • Dynamic Analysis using Survival Rates from Life Tables
  • 生命表生残率を利用した動態的分析

抄録

1.はじめに<br> 地域人口変化を動態的に分析しようとする際,国勢調査をはじめとする静態統計のみからでは主にデータ上の制約から限界があるが,これを動態統計と組み合わせることによって,人口分析の範囲は大きく広がる可能性がある.一方,地域人口変化を詳細に分析する場合,地域メッシュ統計データをはじめとする小地域データの利用が有効である.近年のGISソフトウェアの普及により,大容量空間データの処理も容易になっている.<br> 本研究では,「都道府県別生命表」から得られる生残率を利用することによって,メッシュ人口変化を自然増加と社会増加に分解し,それぞれの動向から都心とその周辺における人口変化のメカニズムを明らかにする.<br><br>2.研究対象地域と利用データ<br> 研究対象地域として,東京の都心周辺の主要都市がほぼ含まれる,都心から30 km圏内を選定した.なお都心の代表点はJR東京駅とした.<br> またデータは,1980・1985・1990・1995・2000年の5時点の国勢調査基準地域メッシュ(3次メッシュ)の男女5歳階級別人口と,同じ5時点の「都道府県別生命表」を利用した.<br><br>3.作業手順<br> 一般に,ある時点t年における,ある年齢階級(x_から_x+4歳)のメッシュ人口をP(x, t),「都道府県別生命表」から得られるt年の年齢階級(x_から_x+4歳)がt+5年に年齢階級(x+5_から_x+9歳)に至るまでの生残率をS(x, t),その間の純移動数をW(x, t)とすれば,<br> W(x, t) = P(x+5, t+5) – P(x, t)×S(x, t)<br>によって求められる.<br>さらに,t年からt+5年にかけてのメッシュ人口の自然増加数をN(t),社会増加数(純移動数)をW(t)とすれば,この間のメッシュ人口変化ΔP(t)は,<br> ΔP(t) = N(t) + W(t)<br>と表せる.ところで,社会増加数W(t)は前掲W(x, t)を全ての年齢階級について足し上げた値となるので,社会増加数W(t)・自然増加数N(t)はそれぞれ,<br> W(t) =ΣW(x ,t)<br> N(t) =ΔP(t) –ΣW(x ,t)<br>によって推計されることとなる.以上の式を対象地域のメッシュ全てに適用し,1980_から_2000年の5年ごと4期間について自然増加数と社会増加数を算出した.<br><br>4.分析結果<br> 上記のようにして求められた自然増加数と社会増加数を都心からの距離帯別に集計し,それぞれを率として表した結果,社会増加率は距離帯ごとに大きく異なるパターンを示すのに対し,自然増加率は都心に近いほど低く,しかも各距離帯において期間を経るごとに一律に減少する傾向が明らかになった.直近の1995→2000年においてもその傾向に変化はなく,「都心回帰」による人口増加はもっぱら社会増加によってもたらされている.<br> また,主要鉄道路線から1km以内に存在するメッシュをバッファリングによって抽出し,沿線別の自然増加数・社会増加数の集計を行った.その結果,社会増加率については都心から北東側を中心とする沿線と南西側を中心とする沿線との間で明瞭な差があり,北東側は南西側に約5年のタイムラグをもって追随する動きがみられた.一方,自然増加率については同一方向でも沿線別に差異が表れ,全体として古くから存在する鉄道の沿線ほど増加率が低い傾向が認められた.<br>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205694216576
  • NII論文ID
    130007017288
  • DOI
    10.14866/ajg.2004s.0.110.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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