沖縄県における小ギク生産と流通の構造

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タイトル別名
  • On the Structure of Production and Distribution of Chrysanthemum in Okinawa Prefecture

抄録

本研究は小ギク主産地である沖縄県を対象として、主な出荷組織による市場対応と農家経営の分析を中心に、その生産と流通の構造を明らかにしようとするものである。<br> 戦後わが国の花き生産は、経済の好況期における花き需要の増大とともに順調に拡大してきた。しかし90年代初頭以降の需要内容の変質と供給過剰とによる卸売価格の低下により、近年、農家の経営不振に起因する生産構造の変容が報告されている。<br> 花きは、野菜など他部門と比較して生産・消費面の零細性が指摘され、流通面においても個人あるいは小規模出荷組織の有効性が認められている。しかしその一方で主産地とされる地域の多くは、出荷組織による共販体制の強化とロット増大により、市場での優位性を確保してきた。こうした大規模産地の優位性は近年の市場構造変化の下で一層高まっており、本研究が対象とする沖縄県における生産維持要因の一つもこの点にあると考えられる。<br> 沖縄県は1972年の本土復帰を契機として、わが国の花き生産拡大期にキクの産地間競争に参入した。「後発産地」「遠隔産地」といった不利性を有する中で、産地形成初期における出荷の組織化は必然的なものであったといえるが、その後の生産拡大期においても、生産・流通の両面で出荷組織の果たした役割は大きい。<br> 本研究では、沖縄県の小ギク生産と流通の構造を次の二つの側面から検討し明らかにする。第一は、沖縄県における小ギク主産地の形成過程とその要因についての整理であり、第二は実態調査に基づく主産地内部の構造分析である。第一の結果をふまえた上で、第二の実態分析に重きを置いて検討を行いたい。<br> 小ギク主産地化の要因としてはまず、粗放化したさとうきび生産と兼業に依存した従来型農家経営の停滞、大規模な農業構造改善事業の展開、県外就労青年のUタ_-_ンの増加など、沖縄県に特有の歴史・経済条件を背景とするものが挙げられる。また市場との関係でみると、露地栽培と端境期出荷を可能にした気候条件、小ギクの品質面での高評価、さらには出荷組織を中心とした産地内部での生産競争などが挙げられる。<br> 沖縄県の花き出荷組織は、離島を含め全県域に展開し共販体制が確立している専門農協と、それに継ぐ広域展開を見せる系統農協、および展開地域の狭い小規模な任意組合とに分かれる。これらの出荷組織は、市場対応の面でそれぞれ独自の方針をもち、その展開は個別農家経営と密接に関わっている。<br> 実態調査は、小ギク生産農家の9割が専門農協に出荷を行っている読谷村と、出荷先が分化している恩納村を対象として行った。読谷村は、2000年現在小ギクの作付面積が県内第1位、出荷量第2位の小ギク生産中心地域である。同村は、1980年前後から大規模な土地改良事業が行われるなど良好な農業基盤をもつ地域といえ、小ギクの専作経営が成立していることを特徴とする。<br> 一方恩納村は、小ギクの作付面積第6位、出荷量第10位の地域である。同村で最も小ギク生産の盛んな喜瀬武原地区では、耕地の排水が悪く、病気の発生を防ぐための定期的な客土を必要とする。同地区では多品目生産による経営が一般的である。喜瀬武原地区の農家は、キク以外の栽培作目との関係や共販体制への適応度などを理由に小ギクの出荷先を選択しており、出荷先は専門農協、系統農協、任意組合の3つに分化している。<br> 両地域における実態調査の結果をふまえて、最終的には農家から市場までを包摂した空間構造を明らかにすることを試みたい。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205694220416
  • NII論文ID
    130007017296
  • DOI
    10.14866/ajg.2004s.0.105.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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