広島市における戸建て住宅団地の高齢化

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タイトル別名
  • A Study on Aging of Detached Housing Estates in Suburbs of Hiroshima City

抄録

1.はじめに<br>  我が国の中山間地域では人口の流出と,居住人口の高齢化により,地域の将来像が描けない,混沌とした状況が続いている。今後も一層の過疎化,高齢化が続くと考えられており,教育,医療,福祉,交通など生活上のあらゆる面で不安を抱えているのが実態だ。<br>  しかし,我が国は2000年代後半から人口減少時代を迎えており,今後はこのような問題が全国のあらゆる地域で発生する可能性が高い。とりわけ,高度経済成長期に全国各地で急増した戸建て住宅団地では,居住者の人口構成が極めて歪であり,今後も高齢化が進展することにより,問題が一気に表面化すると考えられる。だが,統計データが未整備であることなどから,戸建て住宅団地における高齢化の実態については必ずしも十分に明らかにされてこなかった。  そこで,本研究では広島市を対象として,戸建て住宅団地の高齢化の実態を空間的に明らかにする。そして,高齢化の空間的差異が生じる要因について考察を行う。<br><br> 2.広島市戸建て住宅団地の立地特性と高齢化の進展<br>  まず,「広島市開発状況調書」をもとに,住宅団地の立地特性について分析を行った。広島市における住宅団地の開発は市中心部に隣接した地域からはじまったが,当初は小規模な開発が多かった。その後,次第に郊外地域へと外縁的に拡大し,完成年の新しい団地ほど中心部からの距離が遠く,規模も大きくなっている。<br>  また,住宅団地の完成年が古いほど高齢化率が高くなっており,完成から間もない1985年ではその傾向が明瞭であった。しかし,2005年では全ての団地で一律に高齢化率が高まっておらず,住宅団地ごとの高齢化に差異が生じていることが明らかとなった。さらに,完成年の古い団地ほど人口が減少傾向にあり,その多くが第2世代の転出によるものであることが明らかになった。<br><br> 3.広島市戸建て住宅団地の居住者特性<br>  次に,国勢調査小地域集計から居住者属性について分析を行った。まず,団地の人口増加率と高齢化率をみると,人口が減少している団地ほど,高齢化率が高くなっている。あわせて,団地内における住宅の持ち家率が低いほど,第1世代の人口増加率が低くなっていることが明らかとなった。また,産業別従事者割合をみると,第2次産業従事者割合が高い団地は市中心部から離れて位置していることが多く,高齢化率は低い傾向にあった。<br>  次に,第1世代の年齢と第2世代との関係から,戸建て住宅団地における高齢化の過程を5つに類型化した。多くの類型では,経年変化によって第2世代が次第に減少し,第1世代は加齢していく傾向にある。類型ごとの特徴として,「第4類型」は比較的新しい住宅団地が多く,「第5類型」は比較的古い住宅団地が多い傾向にある。また,「第4類型」は団地の規模も大きく,中心部からの距離も遠いのに対して,「第5類型」は団地の規模も小さく,中心部からの距離も短い傾向にある。<br><br> 4.広島市戸建て住宅団地における高齢化の空間的差異<br>  最後に,戸建て住宅団地における高齢化の空間的差異に関する分析を行った。広島市における戸建て住宅団地は地形的制約を受けながら,幹線道路や河川に沿って外縁的に拡大していった。そこで,住宅団地の造成が軸状に拡大していった地域のまとまりを9つのセクターに区分し,高齢化の進展について分析を行った。その結果,西区,東区など市中心部に隣接する地域で高齢化が進展していることが明らかになった。次いで,南区,佐伯区,安佐南区,安佐北区の高陽町,東区の安芸町などで高齢化が高まっている。一方で,安芸区と安佐北区の外縁部では高齢化の進展は緩やかであった。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205694221568
  • NII論文ID
    130007017298
  • DOI
    10.14866/ajg.2010f.0.123.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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