芦田川流域における水需要の変化と水需給特性

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  • Change of water demand and regional characteristics of water supply-demand system in the Ashida River Basin

抄録

<b>1.研究の背景と目的<br></b><br> 日本の水資源政策は、需要増に伴う新規水源の開発から、需要の停滞あるいは減少に伴う既存水源の再編の時代に入ったといえる。それに伴い、水資源問題の関心は、既存農業水利に新規都市用水がいかに参入するかから、異常渇水時や災害時等における水資源の融通に移ったといえる(山下:2009、2013a)。水資源の融通策として従来から議論されてきたのは、農業用水から都市用水への水利転用であるが、一方で緊急時の代替水源として近年地下水が注目されている。<br><br> 以上を踏まえながら本発表では、広島県の芦田川流域を対象に、とくに下流の都市である福山市に着目しながら、水需要の時系列的変化と流域スケールでの水需給の地域特性を明らかにし、渇水時の対応策も含めた水利システムについて報告する。<br><br><b><b>2.芦田川流域の水需給特性</b><br></b><br> 日本全国の一級水系109流域の水需給特性を比較分析した山下(2013b)によると、芦田川流域は、流域の水資源賦存量を100としたときの総水需要ポテンシャル(農業用水、水道用水、工業用水需要の総計)が67であり、これは109流域の中で10番目に高く、中国地方の流域でもっとも高い。このように相対的な水需要が大きいのは、降水量が相対的に少ないことと、上・中流では古くから稲作が盛んで、下流には広島県第二の都市であり工業が盛んな福山市が立地していることが要因である。<br><br> 芦田川水系に水源を求める主な水利権として特定水利権に着目すると、農業用水は5件あり、そのうち3件は中流の府中市内の水田を灌漑している用水であり、残りの2件は、福山市の神辺平野の盆地を灌漑する用水と、最下流のデルタおよび干拓地を灌漑する用水である。他には、府中市(1件)と福山市(2件)の上水道および、福山市の工業用水道が2件ある。<br><br><b><b>3.福山市における都市用水需要の変遷</b><br></b><br> 福山市上水道が通水開始したのは1925年であり、芦田川支流の論田川を水源としていた。1936年には第一期拡張事業に伴い、芦田川の伏流水を取水するようになった。戦後の高度経済成長期にあたる1960年代には、人口増加と工業の発展によって水需要は急激に増加した。1960年に約976万トンであった年配水量は、1970年には3,125万トンになった。そして1980年代以降は、約5,000万トン前後で推移している。1960年以降の水源別取水量をみると、芦田川の表流水の取水量を増加させることで、水需要の急増に対応してきたことが分かる。さらに、三川ダム嵩上げ事業や八田原ダムから水源を得ることで対応してきた。<br><br><b><b>4.芦田川流域における渇水対策</b><br></b><br> 1997年の八田原ダム完成によって芦田川流域の利水安定度は増したとはいえ、最近でも2009年と2013年に渇水が生じ、農業用水と工業用水の取水制限が行われた。工業用水を取水する事業所には、敷地内に井戸を設けていたり、水を使わずに機械を冷却する設備を整えていたりするところもある。福山市上下水道局も、浄水場内に緊急水源としての井戸を備えている。<br><br><br>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205694342912
  • NII論文ID
    130005489901
  • DOI
    10.14866/ajg.2015s.0_100170
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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