鳥取県大山町における食と観光を柱とした地域振興策の展開

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  • Regional Development by Food and Tourism Project in Daisen Town, Tottori Prefecture

抄録

1.はじめに<br>人口減少社会に突入したといわれる現在、グローバル化の進展に伴う国内産業の空洞化や財政赤字の深刻化によって、山間地域では製造業の立地や公共事業などが目に見えて減少し、1990年代後半には大都市圏との格差が一層拡大するようになった。そのような中、農山村地域では地域資源の持続的活用による地域振興事業が盛んに行われるようになり、6次産業化や農商工連携が地域存続の切り札として期待されるようになった。本発表で取り上げる鳥取県大山町でも、広域合併を機に農林水産業と観光業を柱とした地域振興計画「大山恵みの里計画」が立案され、両者が有機的に結合して相乗効果を上げることが目指された。そこで本発表では、上記計画が本格化して5年を経た現在、どのような成果と課題があるのか若干の考察を行う。 <br><br>2.大山町の地域特性と食と観光を柱とした地域振興<br>1)地域概要大山町は、鳥取県西部に位置する人口約1.7万人の町で、2005年に西伯郡内の3町(大山町・名和町・中山町)が合併して誕生した。町域は中国地方最高峰の大山(1,729m)の北斜面に広がり、山岳地域は登山やスキー客を集める一大観光地となっている。また、山麓地域では約30年の歳月をかけた国営パイロット事業(385ha)が実施され、梨・ネギ・ブロッコリーの集団産地が形成されてきた。<br><br>2)山麓地域における「食」関連事業の展開 上記計画で「食」関連事業を担っているのは第3セクターの「大山恵みの里公社」である。この公社は、町内の1次産品・特産品・加工品の販売強化と雇用創出をめざし、①「大山」ブランド産品の開発と認証、②ネット通販などマーケティングの支援、③創業・新規参入の支援など人材育成、④販売拠点ともなる総合交流拠点の管理運営、の4事業を展開している。これらの事業の中で先行し、かつ最も実績が上がっているのが④に該当する「道の駅」の運営で、創業以来2000万円以上の収益を出している。しかし、他の3事業については未だ成果が乏しく、公社全体では赤字経営が続いている。<br><br>3)山岳地域における観光業の振興 山岳地域における観光業の中心はスキー場経営である。しかし、スキー場の集客は1990年代末以降は激減し、宿泊施設をはじめとする商業やサービス業の衰退が目立ってきた。そこで、大山観光局では夏期も含めた周年的な集客を増加させようと、近年、様々なイベントや周遊プランを提示すると同時に2013年秋には温泉施設を開業した。また、2011年以降は積雪にも恵まれ、客層の変化に対応したスキー場の取り組みもあり、スキー客は回復基調にある。しかし、これらの動きは必ずしも滞在時間の長さには結びついておらず、地元の「食」を観光資源として活かす試みも少ないのが現状である。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205694346752
  • NII論文ID
    130005473633
  • DOI
    10.14866/ajg.2014s.0_100099
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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