GISの実習用オープン教材の試験運用と改良
書誌事項
- タイトル別名
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- Trial operation and subsequent improvement of open-access e-learning material for GIS education
説明
これまでにGIS教育の充実のために、科学研究費を用いた複数のプロジェクトが行われ、基本となるコアカリキュラムと講義用の教材が整備された。しかし、実習に関する検討は少なかった。GISを活用できる人材の育成には、大学の学部や大学院等における実習を通じた教育が重要である。<br> そこで、GISの実習用教材を開発し、公開するプロジェクトを平成27年度より開始した(科学研究費基盤研究A「GISの標準コアカリキュラムと知識体系を踏まえた実習用オープン教材の開発」、平成27~31年度、代表者:小口 高)。本プロジェクトでは、日本独自の地理情報科学の知識体系を教科書として編集した『地理情報科学 GISスタンダード』(浅見ほか編, 2015)の章構成を参考に、実習用のWEB教材を開発してきた。教材はGitHubで試験運用を行い、一般公開に向けて改良を重ねている。その一環として行った大学の実習授業における本教材の試用とその後の教材の改良について、本発表で報告する。<br> 実習の授業は、東京大学理学部地球惑星環境学科において、2016年9月22日から11月10日の期間に7回実施した。このうち第1回から第6回の実習で、本プロジェクトで開発した教材を試用した。ソフトウェアはおもにオープンソースのGISであるQGIS(LTR版、バージョン2.8)を利用した。受講者の大半は学部3年生であった。<br> 実習では、冒頭で概要と課題の簡単な説明をし、次に学習者が教材を参考に学習を進めた。各学習者から操作に関する質問があった場合にのみ、教員やTAが該当箇所の解説を行った。課題は実習内容と対応した地図の作成と設問への回答とした。実習ごとに課題の量は異なるものの、平均して各課題で3~4枚程度の地図の作成を必要とした。<br> 各実習の終了後、教材の検証と改良を目的としたアンケートを実施した。主なアンケート項目として、「本実習および教材の難易度」、「教材と関連する処理におけるQGISの使用感」、「閲覧やリンクなどに関する教材の利用性」、「教材における解説の適切性」を設けた。また、教材の改善に関する自由記述や、学習者の個人属性等を把握する質問も適宜加えた。各回の実習でのアンケートの結果をもとに、次回の実習で利用する教材を改良し、その効果を調べた。第6回目の実習の終了時には、総合評価として「これまでの実習を総合した実習と教材の難易度」、「実習中に難しいと感じた項目」、「これまでの教材改善について」、「実習を通して感じた本教材の改善点や要望」の項目についてアンケートを行った。これらの結果から、6回の実習を通じた教材の改良が、実習の難易度を下げ、教材の利用性を高める効果があったものの、教材の解説や設計にまだ不足の部分があることが明らかになった。<br> そこで、全実習の終了後に、アンケート結果に基づいた教材全体の修正や機能の追加などを行った。主な改良点には、1)教材の解説に関する修正、2)振り返り学習用のリンクの整備、3)まとめページの追加がある。1)では、アンケートで指摘された箇所を中心に、テキストや画像の追加と変更を行った。2)では、空間座標の変換といった利用頻度は高いが一度の実習では覚えにくい項目について、どの教材からもスムーズに解説を参照できるようにリンクを追加した。3)では、実習を円滑に進めることや理解度の向上を目的として、実習ごとに教材と対応した課題とその解説のまとめのページを追加した。このページに課題とした地図の完成例、作成手順、基本用語の解説、実習時の注意事項といった多様の情報を含め、GISの初学者でも躓かずに学習ができるようにした。さらに、閲覧に優れたGitBook形式での教材運用、実習用サンプルデータの整備、用語集の作成といった改良も現在進めつつある。<br> 今後も、大学等における実習の授業や個人の自主学習等の機会を通じて、本教材の改良を適宜行っていき、教材の一般公開を目指す予定である。
収録刊行物
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- 日本地理学会発表要旨集
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日本地理学会発表要旨集 2017s (0), 100154-, 2017
公益社団法人 日本地理学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205694376960
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- NII論文ID
- 130005635625
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可