東京大都市圏郊外における子育て世帯の居住地移動

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タイトル別名
  • Migration of the child-rearing households in the Tokyo Metropolitan Area Suburbs
  • 川崎市麻生区の事例
  • A case study of Asao Ward, Kawasaki City

抄録

1.研究背景と目的<br> バブル崩壊以降,地価の下落から都心回帰が進む等,子育て世帯の居住地移動も多様な動きが見られるようになった.しかし近年まで統計データの量が不十分であったことから,子育て世帯のみに焦点をあてた居住地移動の分析は難しかった.しかし2010年の国勢調査より0~4歳のみではあるが特定年齢層の市区町村間での移動人口が把握可能となり,子どもを出産した直後の子育て世帯の居住地移動の動向が把握できるようになった.さらに川崎市の独自集計では町丁目単位で前住地の市区町村が把握できることから,より細かな子育て世帯の居住地移動の実態が把握できるといえよう. そこで本研究ではその川崎市の中でも0~4歳の常住人口に占める転入人口の割合が高く,かつ郊外住宅地としての特徴をもつ麻生区を対象に子育て世帯の転入動向を0~4歳の移動人口から明らかにする.<br> 2.麻生区全体でみた子育て世帯の転入動向<br>まずは麻生区全体での転入動向を見ていく.前住地が40人以上の自治体は世田谷区,町田市,川崎市多摩区,横浜市青葉区と隣接自治体あるいは人口規模の大きい自治体であった.特に多摩区は111人であることから,隣接地からの転入が多いことがわかる.20人以上の自治体では調布市,稲城市,川崎市中原区,高津区,宮前区が加わり,東急田園都市線および京王線の沿線地域からの転入傾向があることが伺える.さらに麻生区より西側の都心から30km以遠では相模原市南区,厚木市から10人以上の転入が見られる.小田急線沿線でみると都心および隣接地だけでなく,都心から離れた地域からの転入傾向も見られた.<br> 3.町丁目単位でみた子育て世帯の転入動向  <br>ここまで区全体での居住地移動の動向を見てきたが,転入する子育て世帯が麻生区内の中でも具体的にどういった地域に居住地移動をするかは町丁目で見ていく必要がある.そこで先の分析で前住地人口が40人以上だった世田谷区,町田市,川崎市多摩区,横浜市青葉区を対象に各市区から麻生区内に転入する0~4歳の人口が多い町丁目の転入動向について検討する.  まずは各市区からの転入動向を見ていく.世田谷区では万福寺4丁目への転入人口が8人と最も多く,次いで百合丘3丁目の4人が多い.町田市では,はるひ野3丁目の4人が最も多く,はるひ野2丁目,百合丘3丁目の3人が次いで多い.町田市からの転入人口は,はるひ野地区と町田市との境に近接した町丁目が多いことから,短距離移動が多い側面が見受けられる.多摩区では王禅寺東6丁目の4人が最も多く,次いで東百合丘1丁目,王禅寺東5丁目,万福寺4丁目の3人と続く.青葉区では王禅寺と王禅寺東6丁目の6人と最も多く,それ以外では万福寺3丁目の5人,岡上と早野の3人と続く.青葉区への転入人口は町田市と同様,青葉区との境に近接した町丁目が多いことから,短距離移動が多いといえる.  4市区全体からの転入動向を見ていくと,万福寺4丁目への転入傾向が強い.転入人口が106人と麻生区内の町丁目で1番多いことからも,子育て世帯の転入が高い地域であるといえる.万福寺4丁目は持ち家率が約88%,共同住宅の居住率が約78%で,6階以上の共同住宅への居住率が約64%と,マンションタイプの特徴をもつ.このことから麻生区の事例からも高層マンションへ転入する子育て世帯が増加していることが明らかとなった.<br> 4.まとめ  <br>本研究では川崎市麻生区を事例に0~4歳の移動人口から子育て世帯の転入動向をみてきた.区境に近接した地域では隣接地からの転入が多いこと,また既存研究でも見られる高層マンションへの転入人口の増加傾向が麻生区でも見られることが明らかとなった.しかし一方で,子育て世帯の居住地選択の規定要因は彰となっていない.たとえば第2子の出産にあわせて等の転居理由の解明について今後の検討課題としたい.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205694400000
  • NII論文ID
    130005481505
  • DOI
    10.14866/ajg.2014a.0_32
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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