カナダ・ブリティッシュコロンビア州のオカナガンバレーにおけるワインツーリズムと地域の変化

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タイトル別名
  • Wine tourism and changing regions in Okanagan Valley of British Colum bia, Canada

抄録

カナダ西部のブリティッシュコロンビア州の内陸に位置するオカナガンバレーは、この国有数のワイン生産地域として知られる。20世紀末から新しいワイン生産地域が急速に形成された。こうした地域の変化を読み解くためには、20世紀末以降のグローバル化の進展、新しいライフスタイルの登場、そして政府による産業振興政策を背景として、ルーラルツーリズムの一つの形態であるワインツーリズムに着目することが必要になる。すなわち、ワイン産業の発展は、農村空間の商品化の視点を導入することによって説明することができる。<br> オカナガンバレーは、アメリカ国境の北側に、南北方向に150kmにわたって延びる谷であり、北からオカナガンレーク、スカハレーク、オソユースレークという湖が連なる。気候は比較的温暖で乾燥しており、19世紀後半にヨーロッパ系の入植者が植民を開始した。大陸横断鉄道の開通は地域の発展を促進し、リンゴやモモなどの果樹栽培が盛んになった。20世紀後半には、アメニティ産業の発展、別荘地開発、退職者コミュニティ、観光化、ワインツーリズムが進展し、人口増加と経済発展が実現された。<br> ワイン産業は、地域外から資本、技術、経営者が流入することによって展開した。コロンビア州ワインインスティテュートのワイナリツアーガイドによると、2015年現在で136のワイナリーが立地する。地域的にみると、北部のケローナ地域、中部のペンティクトン・ナラマタ地域、南部のオリバー・オソユース地域にワイナリーが集中する。ケローナは内陸における経済と文化の中心地であり、多様な都市機能とワイナリーが混在する。ペンティクトン・ナラマタ地域では、果樹園からブドウ園への転換が進み、風光明媚な農村景観がワインツーリズムの基盤をなす。オリバー・オソユース地域では、西側の果樹地帯においてはブドウ園への転換が進んだし、東側では牧場に大規模なブドウ園が形成された。<br> いずれの地域においても、ワインツーリズムの重要性は共通した特徴である。趣向を凝らしたワイナリー建物、試飲直売所、ワインツアー、併設レストラン、リゾート型宿泊施設は、多様なワインツーリズムを提供する。ワインフェスティバルも人々を引き付ける。<br> 新興ワイン生産地域の発展とワインツーリズムを読み解くカギとなるのは、カナダ人の生活文化である。ワインは人々の日常生活の一部であり、気に入ったワインをまとめて購入するのが一般的であるようにみえる。各ワイナリーがワインクラブをもち、固定客から注文を受ける仕組みも確立されている。地元の食材と地元のワインを楽しむという地産地消の発想が一般的であるように見える。これは日本におけるワインツーリズムとは異なる点である。すなわち、ワインツーリズムの基盤をなす人々の生活文化について、理解を深めることが重要である。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205694414208
  • NII論文ID
    130005635657
  • DOI
    10.14866/ajg.2017s.0_100127
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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