地理空間情報のオープンデータ化とその活用可能性

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • The Possibility of Using Open Data of Geospatial Information
  • 静岡県を事例に
  • The Case Study of Shizuoka Prefecture

説明

1.はじめに 2000年代後半以降,機械判読と二次利用可能な形式で公開されるオープンデータが,市民参加の実現に向けた政治・文化運動として注目されるようになっている.特に,2009年に米国で発足した第一次オバマ政権が,政府の透明性や市民参加,官民の連携の促進を,オープンガバメント(Goldstein and Dyson, 2013)と位置づけ,これを実現する一つとして,公共機関の有する様々な情報をオープンデータ化しWeb上に公開し,英国やEUもこれに続いた.  我が国では,2010年末に福井県鯖江市が「データシティ鯖江」として活動を開始し,2012年7月に内閣府による「電子行政オープンデータ戦略」が策定された.これを元に,政府機関や地方自治体における行政情報のオープンデータ化が急速に整備され,2013年12月にはポータルサイトであるData.go.jpが開設された.  当初,米・英のオープンデータは白書や統計資料を中心に整備されたが,地方自治体における施設の位置情報や交通網など地理空間情報が次第に重要視された.2013年6月のG8サミットでは「オープンデータ憲章」が宣言され,地理空間情報が重要なオープンデータとして明記された.  本研究は以上の状況を背景に,先進事例である米・英における動向を整理するとともに,日本における事例として静岡県を対象に,オープンデータを介した市民参加の可能性を検討することを目的とした.   2.研究方法 本研究では,オープンデータ整備の活発な米国と英国の動向を踏まえて,静岡県のオープンデータ提供サイトである「ふじのくにオープンデータカタログ」における地理空間情報の提供経緯や,データの利用状況について検討した.   3.研究結果 地方自治体レベルのオープンデータは,米国においては日本と同様に各自治体のWebサイト上で,39州・44市が公開されている(2014年1月現在).他方,英国では,地方自治体や博物館等の公的機関のオープンデータが含まれ1,100組織以上である.このようなオープンデータのカタログサイトはオープンソースソフトウェアのSocrataやCKANをベースに,地図化や複数フォーマットでのダウンロード機能が実装されている.  静岡県では2013年8月末より公開を始め,2014年1月時点で,約90種類のオープンデータを国産のオープンソースCMSであるNetCommonsで提供している.他のポータルサイトほど多機能ではないが,2011年より運用されている統合型GIS(杉本,2013)で整備された都市計画図や道路インフラに関するベクトルデータ,観光施設に関する位置情報(5カテゴリ75データ)が,主にCSVやSHP形式で提供されている.ポータルサイトの閲覧状況は,2013年8月末から12月までに約8,500のユーザー(5ヶ月間の平均で約1700ユーザー)がWebサイトを訪れ,約16万ページビュー(同平均で約3万1千ページビュー)に達するなど関心が高い.また公開されているデータは,スマートフォン用のアプリケーションに組み込まれたほか,OSMデータに変換されるなど地図用途での活用も始まっている.   4.おわりに オープンデータは,地方自治体のWebサイト上で閲覧されるだけでなく,本来の目的である地理空間情報の特質を活かした地域課題の解決に向けて,市民活動での利用や地元企業・市民エンジニアによるアプリケーション開発への活用が望まれる.他方,日本国内で地理空間情報を最もオープンデータ化している静岡県でも,地域課題の解決に関するアプリケーションは少数に限られている.したがって,地域の地理的特質を加味したデータの活用ニーズやアプリケーションの実装に関するワークショップを通して,地域課題解決に向けた活動が継続的に実施されるべきである.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205694515968
  • NII論文ID
    130005473760
  • DOI
    10.14866/ajg.2014s.0_100153
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ