富山における公共交通によるまちづくり

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  • Reconstruction of the City of Toyama

抄録

はじめに 当発表はトラムを軸とした公共交通を新設・充実させることを通じて富山の街を「活性化」、「低炭素交通」などを実現させた富山のまちづくりのプロセスを解明するとともに、今後に残されている課題と展望を論じる。 2 1980 年代における富山の都市問題と實プラン 1980年台以降、富山では、モータリゼーションに伴い①郊外部への大型店の進出による中心商店街の疲弊、②豪雪時の交通渋滞など、深刻な都市問題に悩んでいた。この課題を解決策は「公共交通、とりわけトラムを充実させ、「車」交通から公共交通への転換を図る」ことが一番のポイントになると考えた。ここで、公共交通を軸にした實プランを提示するにあたり以下のヒントを得た。①街の活性化させるには、車を都心部まで入れる米国の都市より、トラムを充実させ都心部から車を排除するヨーロッパの都市の方が有効である。②豪雪時の都市交通には「トラム」が強く、渋滞解解消の効果が大きい。 以上をヒントにトラム(イメージとしてはミニ地下鉄:VAL)の導入を軸の以下の「實プラン」を呈した。①    トラムのルートは起点を旧富山港線の岩瀬浜(回船問屋)。南下して、カナルパーク、富山駅を通り、富山城をくぐり、城南公園(富山科学文化センター)、富山インター、富山空港(能楽堂、富山市体育館、テクノホール)、スポーツ村(野球場)まで。富山の顕著な名所を一本の線路で連結される。さらに、都心部はループにし、西町から東の不二越工業まで延伸させる。これにより、郊外からも都心部へのアクセスが「車」から「トラム」転換される。低炭素都市になり大気汚染が浄化され、都心部での交通事故も減少する。②    トラム創設により、豪雪に強い街になるとともに、安心してワインが飲め、都心部での触れ合いの時間が充実し、都心部の活性化が図られる。 3 富山のライトレールの導入とその効果 2007年に、旧JRの富山港線の廃線の跡に、富山市や地元企業の出資の第三セクターの富山ライトレール(株)が上(新会社:交通サービスの提供、施設の運営)下(富山市:路面部の施設整備・維持・管理)分離の経営で、日本初、全車LRVのトラムが運行した。2015年の北陸新幹線の乗り入れにあわせて、LRVの車輛が7セット(14.1億円)確保できたのは大きかった。その結果、2005年と2007年を比較すると、乗客数は平日で2倍、休日で3.6倍、ダイアの本数も1時間当たり2本から4本に増加した。利用交通機関の転換は、平日で自動車から11.7%、徒歩・二輪・タクシーから7.9%と約20%近く変換した。また、富山市は「コンパクトシティ」を狙い、都心及び沿線周辺に人口を誘導するため、区域名の住宅建設に補助金を出すなど財政的支援を行った。この結果、2006年以降、富山のまちなかの人口減少傾向に歯止めがかかった。 4 富山の公共交通による街づくりの今後の課題 富山のトラム創設による街づくりへの効果はコンパクトシティの形成、都心部の活性化など一定の成果はあったものの、北陸新幹線の建設にともない、在来の北陸線が県ごとに分割されたうえ、第三セクターの経営となり、運賃・運行サービスの削減が懸念される。低炭素都市建設のためにも「運輸連合」「ゾーン運賃制」の検討が待たれる。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205694544768
  • NII論文ID
    130005481589
  • DOI
    10.14866/ajg.2014a.0_37
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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