生産拡大期における東南アジア自動車企業の立地展開

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タイトル別名
  • The Locational Pattern of the Automotive Industry in the era of Expansion of Production in Southeast Asia
  • タイ,インドネシアを事例に
  • A Case Study of Thailand and Indonesia

抄録

1.研究の目的<BR> 東南アジアの自動車生産台数は2005年に200万台を突破し,2014年には388万台とインド(384万台)に匹敵する規模となっている.なかでも,2000年前後に日系自動車企業を中心とした世界的輸出拠点として成長を続けるタイ,東南アジア最大の人口規模を誇るインドネシアでは,2000年代中頃から国内市場向けとともに輸出向け生産が増加し,生産台数が飛躍的に増加している.<BR> 東南アジア諸国の自動車産業は,国内市場の規模や歴史的経緯,民族系自動車企業の有無など,国によってその特徴が異なっているものの,日本企業や日本企業の技術協力等により製造する企業を中心に発展してきたという点では共通している.日本自動車企業は1990年代以降にASEANの域内貿易自由化を背景として東南アジアの拠点間の生産ネットワーク化を進め,部品・完成車の相互補完体制を構築している.<BR> このように,両国は東南アジアの中核的な生産拠点として成長しており,近年の生産規模拡大は注目に値する.こうしたなか,自動車産業の空間構造がどのように変化しているのかについて明らかにする必要がある.そこで本研究の目的は,タイとインドネシアを事例に,2000年代以降の動向に注目して自動車企業の立地展開を定量的に把握することとする.<BR>2.立地展開の特徴<BR>1)タイ—東部臨海地域への集中—<BR> タイの自動車企業は17社23工場が立地している(フォーイン,2015など).同国の場合,1960年代に自動車生産を開始したが,それらの多くはバンコク都を中心とするバンコク大都市圏に立地していた(宇根,2006).<BR> その後,1990年代以降に設立された組立工場はバンコクから60-100km離れた東部臨海地域に集中している.2010年代においても東部臨海地域を中心に新工場が建設されており,1990年代以降の立地動向が現在も継続していると理解される.1987年に開始した投資委員会(BOI)による地域別税制恩典制度(ゾーン制)は2014年末に廃止され,新たな政策が実施されており,今後の動向が注目される.<BR> 2)インドネシア—西ジャワ州への外延的展開— <BR> インドネシアには15社18工場が立地している(フォーイン,2015など).タイと同様に日系自動車企業が市場の中心を担っているが,欧米企業の事業展開も本格化している.同国では大家族が多いことから,ミニバンや小型商用車タイプの乗用車生産が中心である.2007年頃からは日系企業による輸出向け生産も拡大しつつある.<BR> インドネシアの製造業および工業団地はジャカルタおよびその東部に位置する西ジャワ州に集中していることが明らかになっているが(小長谷,1999),自動車組立工場においてもジャカルタ首都圏および西ジャワ州に立地している.2010年以降は自動車企業による新規組立工場やエンジンなどの部品工場の設立が相次いでいる.それらの多くは西ジャワ州のカラワン県など,ジャカルタ中心部から30-50km以上離れた地域に立地している.当該地域では大規模な工業団地開発が行われているほか,比較的安価な賃金で労働力を雇用できる.こうしたことから,インドネシアの自動車産業集積は東部へ外延的に拡大している.<BR>【文献】 宇根義己(2006):タイにおける日系自動車産業の外延的拡大とその集積構造.経済地理学年報 52: 113-137. <BR>小長谷一之(1999):都市構造.宮本謙介・小長谷一之『アジアの大都市[2]ジャカルタ』87-116. 日本評論社.<BR>フォーイン(2015):『ASEAN自動車産業2015』フォーイン.<BR>【付記】本研究は,平成27-29年度科学研究費補助金若手(B)(課題番号15K16887)の助成を受けたものである.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205694614144
  • NII論文ID
    130005490270
  • DOI
    10.14866/ajg.2015a.0_100144
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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