キルギス・アラトー山脈における大規模出水する氷河湖の地形的特徴
書誌事項
- タイトル別名
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- Topographical features of glacier lake that causes a large scale flood in Kyrgyz Ala-Too Range
抄録
1. はじめに 中央アジアでは近年,小規模氷河湖が数ヶ月のうちに出現・出水し,下流域に甚大な被害を生じる氷河湖決壊洪水(GLOF)が報告されている (Narama et al., 2010; Mergili et al., 2013).このような短期間で出現・出水する氷河湖は短命氷河湖と呼ばれ,リモートセンシングで湖の出現を把握することは極めて難しい.この地域で最近報告されている短命氷河湖がどのような地形にでき,どのくらいの規模の氷河湖が出現するのかは明らかになっておらず,このGLOFタイプの詳細な調査が必要とされている.本研究では,氷河湖と居住地の距離が短く国内で最も人口が集中する天山山脈北部のキルギス・アラトー山脈を研究対象地域とし,氷河湖が出現する可能性がある地形的条件を検討し,この山域のGLOF被害の現状を明らかにすることを試みた.<br> 2. 研究方法 衛星画像データを用いて,研究地域の最新の氷河湖インベントリを作成した.使用データは2014年8月と9月撮影のLandsat8(OLI/TIRS)で,GISで氷河湖(>0.001km2)のポリゴンデータを作成し,位置情報,面積,標高,氷河湖タイプの属性データを加えた.山脈中央部の3流域で,Corona/KH3/KH4A/KH4B,Hexagon/KH9の衛星写真,旧ソ連撮影の空中写真,Landsat7/ETM+,ALOS/PRISM AVNIR-2を用いて,1960年代から現在までの氷河湖の面積変化を調べた.短命氷河湖ができる湖盆地形の抽出には,ALOSとASTERのDEMを使用した.氷河湖を氷河接触タイプと非接触タイプの二つに分け,水のたまる湖盆かどうかを検討した.現地調査では,湖盆地形のGPS測量,湖盆図作成,地形観察,過去のGLOF跡調査,聞き取りをおこなった.<br> 3. 結果 キルギス・アラトー山脈では2014年の時点で,267個の氷河湖(>0.001km2)が確認された.面積変動解析の結果,中央部の3つの流域の氷河湖の3割が,拡大と出水を繰り返す氷河湖タイプであることがわかった.過去に繰り返し出水したいくつかの氷河湖は数年~数ヶ月で出水した短命氷河湖であった.短命氷河湖ができる氷河湖は,湖盆地形に突然水がたまることから,DEMを用いて氷河前面の湖盆地形の抽出をおこなったところ,0.01km2以上の湖盆地形が45個確認できた.過去に大規模出水した氷河湖跡は,これらの抽出した湖盆地形に含まれていた. <br> 4. 考察 湖盆地形に水がたまるかどうかの検討をおこなった.氷河の融氷水が直接湖盆へ流入する氷河接触タイプの湖盆地形は今後水がたまり短命氷河湖ができる可能性が高い.一方,氷河と離れた位置にある非接触タイプの湖盆地形に水がたまる条件として,1)上流側に表面水流があり水の供給があること,2)埋没氷のデブリ帯が下流側にあり,下流への氷河湖からの表面流出が見られないこと,3) 小さな池がある場合は季節変化があること,の3つが挙げられる.また,湖盆地形の形成は,氷河の急激な縮小により,氷河末端に凹地の空間ができるためである.その凹地のできる時代によって氷河接触タイプか非接触タイプにわかれる.45個のうち,水がたまる条件を持つ湖盆地形は34個あり,これらは山脈北面地域のほとんどの谷に分布していた.今後これまでGLOF被害が報告されていなかった谷でも,短命氷河湖による出水により,山地内の谷底や沖積錐周辺や川沿いで洪水被害が起こる可能性がある.
収録刊行物
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- 日本地理学会発表要旨集
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日本地理学会発表要旨集 2015s (0), 100152-, 2015
公益社団法人 日本地理学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205694615040
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- NII論文ID
- 130005489845
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可