画像の中の地球儀 その2 - 「Hitlerの地球儀」捏造に使われたコロンフ゛ス社製卓上地球儀 -

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書誌事項

タイトル別名
  • Terrestrial globe depicted in image 2; Columbus desktop terrestrial globe used for forgery of Hitler's globe

抄録

1. はじめに Hitlerの地球儀と呼ばれる地球儀はColumbus社の大地球儀Grosse Globusの他に、高さと直径が各々45.7cm、33.2cmのBarsamianがBerghofで5月10日の捕獲した金属半子午環、木製円柱と2段の円形台座の卓上地球儀(以下Barsamian地球儀とする), MünchenのHitler邸で撮影された地球儀、米軍西欧本部の半子午環卓上地球儀の合計3個(?) が知られている。前2者は寸法の近似と形状の酷似が、他は「Z」の誤植からfakeと指摘された(宇都宮,2012)。独Dokumentations ObersalzbergのwebpageでもBarsamianは名を晒されているが、当時の資料、写真、Berghofの破壊、Scherman、Lee Miller他の画像によるとHitlerの地球儀は疑わしいことが明らかとなった。 2. 地球儀球体の素材 1) Columbus社作業場の球体: Bundesarchivsの写真ではColumbus社作業場に透明樹脂の小球が作業員後方の作業机上に存在する。 2) Barsamian地球儀: この地球儀の公開画像では、亜麻布混鋸屑/木屑/カート゛ホ゛ート゛の球体をコ゛アが覆い、合成樹脂は見えない。戦時下の物資欠乏により、これらの素材に代替されたと考えられ、Columbus 社に問合せ中である。いずれにせよ、これらの材質は火炎や熱に弱いことは明らかである。 3. MünchenのHitler私邸の写真について MünchenのPrinzregentenplatz 16のHitler私邸は1945年4月末から5月3日にかけてLee MillerとScherman他、兵士2名により占拠された。 1) BathtubのLeeとSchermanほかの写真:LIFEのSchermanによる写真のHitler bathtubのLee Millerの額入りのHitler写真はLeeが撮影した壁に立掛けた写真と同一という(Monahan私信2015.8.7)。他にLee撮影のBathtubの男(彼;Scherman)の写真3枚があり、一連の行動には戦勝国の傲りが見てとれよう。 2) 事務机上の地球儀: Scherman撮影のHitler事務机の写真ではフランコ贈物のワインに結びつけたスヘ゜イン国旗と、アルハ゛ム(何れも不明瞭)の他、卓上地球儀等が被写体とされている。事務机の高さによる概算では地球儀の高さと球径は大きくとも各々50.4~52.1cm、32~33cm程度で、その寸法と外見はBarsamian地球儀に酷似する。Lee撮影の似た構図で、兵士有無の写真2枚で見ると、机上の外れた受話器、ワインホ゛トル(独/仏産(?) のなで肩)など、被写体や/性状が異なり、且つSchermanのヘ゛ストアンク゛ルとは異なるため、彼の撮影の合間のLeeの盗み撮りで、被写体の幾つかは元々、存在しなかったことを示唆する。このLife誌(19450528)掲載写真の被写体は揃いすぎ(宇都宮,2012)で、Barsamian地球儀に酷似のそれがHitler邸には残存せず、所在不明という。被写体が存在したとしても、彼らの略奪(彼自身の別証言から推定)によろう。 4. Berghof由来の「Hitlerの地球儀」の信憑性 LeeとScherman両名による同アンク゛ルの火煙の吹出すBerghofの写真は、5月4日の占領直後の状況を示す。火焰の噴出するBerghofで、可燃性素材の地球儀が無傷で残ること自体、物理・化学的にあり得ない。Berghof側関係者の証言、指紋やDNA鑑定の必要性(宇都宮,2011)も無い。Münchenの Hitler私邸で撮影され、その後、所在不明となった被写体(地球儀)はここに携行され、鎮火と室温低下後に置かれたと推定される。 5.まとめ 1) MünchenのHitler私邸での写真家の行動(LeeとSchermanの入浴の撮影,額入Hitler写真,事務机上の小物等の有無と配置)やキャフ゜ションとの比較検証は,地球儀が元々存在しなかった事を示唆し,芸術家個人の発想や傲りのみでなく国家戦略下の予定行動とも窺える。 2) Berghofの猛火の中で火や熱に弱い素材の地球儀が無傷で残ることは物理・化学的にあり得ない。 3) BerghofでBarsamianが獲得したコロンフ゛ス社製卓上地球儀はMünchenのHitler宅で撮影された地球儀と同一で、Schermanが携行し、熱の冷めたBerghofの室内に置いたものと推定せざるを得ない。1940年代のLIFEやTIME等写真誌の記事 / 映像には、カ゛島の日本兵骸骨、マ元帥と天皇など、この類の映像演出/作為には事欠かない。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205694759168
  • NII論文ID
    130005635520
  • DOI
    10.14866/ajg.2017s.0_100043
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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