山陰地域における都市空間変動とマンション立地

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タイトル別名
  • Urban Spatial Cycle and Condominium Construction in Sanin area
  • 再都市化現象の出現可能性に関する考察
  • Occurrence Possibility of Re-Urbanization

抄録

1.はじめに<br> 東京圏をはじめとする大都市圏においては,1990年代から人口の都心回帰による再都市化の傾向が指摘されてきた.再都市化とは,人口減少により空洞化した旧来の中心地区に再び人口が流入する動態であり,都市空間変動との関係で見れば,人口増加地区が郊外から中心部へと移動する現象といえよう.中心部での人口密度の向上は,集積の外部経済性を高め,特に人口減少地域では都市機能を維持した上での都市の縮退戦略とも相性が良い.このため,中心部の空洞化が著しい地方都市において,再都市化は都市の持続可能性を左右する重要な社会現象である.  しかし,大都市圏に比して中小規模の地方都市での研究は少なく,特に人口減少局面にある地方都市での再都市化現象の出現状況は明らかでない.そこで本研究では,山陰地域の都市圏を事例に,都市空間変動を明らかにするとともに,今後の再都市化の可能性を考察する.<br>2.都市空間変動<br> 本研究では,空間的,時系列的な比較が容易な地域メッシュを用いて圏域を定義し,その人口・従業者数の動態を把握する(図1).設定した圏域における人口・従業者数は,2000年以降いずれの都市でも郊外地域の成長が止まりつつあり,郊外化が終焉を迎えつつあることが確認された.一方で,中心地域の衰退も続いており,まだ再都市化の傾向はみられない.ただし,郊外化が止まりつつある中で,相対的に分散傾向は弱まりつつある.<br>3.マンション立地<br> 山陰地域におけるマンション開発は1980年代から始まっているが,特に2000年以降に急増している.松江市の場合で見ると(図2),全てのマンションが都市地域にあり,中心地域には戸数ベースで86.6%が集中している.このことから,マンションの立地が都市インフラなどの利便性を強く志向することがうかがえる.本格的な地価上昇が見込みずらい人口減少地域の都市において,比較的利便性の高い中心地域は,今後もマンション開発が進む可能性がある.<br>4.おわりに<br> 山陰地域の都市では,2000年代以降,郊外の成長鈍化により本格的な人口減少期に入った.都市空間変動の視点からはまだ再都市化の傾向は確認できないものの,中心地域にはマンション開発が集中し,その結果,人口が増加するエリアが確認できた.今後も中心地域におけるマンション開発が続けば,郊外地域の成長が止まりつつある中で,相対的な再都市化が生じる可能性があると言えよう. <br>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205694768640
  • NII論文ID
    130005635489
  • DOI
    10.14866/ajg.2017s.0_100041
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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