日本における展望タワーの立地特性

DOI
  • 太田 慧
    首都大学東京大学院 都市環境科学研究科
  • 杉本 興運
    首都大学東京大学院 都市環境科学研究科

書誌事項

タイトル別名
  • Distribution and Locational Characteristics of Observation Towers in Japan
  • 自然条件との関連に着目して

抄録

1.研究背景と目的<br> 本研究は,日本全国に立地する展望タワーの立地特性を自然条件との関連から明らかにしたものである.ヨーロッパにおける展望タワーの歴史は,19世紀のエッフェル塔の登場が大きな転換点となり,以後エッフェル塔を模した塔建築は世界各地で開催された博覧会のモニュメントとして建設され,その一部は現在でも観光施設として残っている(川村,2013).さらに,展望タワーは19世紀以降ヨーロッパの海岸リゾートにおいて多数建設され,ビーチ全体を見渡せるモニュメントとして観光客を非日常的な眺望で楽しませた(Urry,2002).また,19世紀のドイツでは,愛国心を鼓舞するために大自然の景色を見渡せる山頂に多数の展望タワーが建設された(川村,2013).このように,ヨーロッパにおける展望タワーは,博覧会会場,海岸リゾート,および自然を見渡せる山頂に立地していた.現在においては,展望タワーをはじめとした塔状建築は世界中の都市の内外において建設され,多数の展望タワーが世界各地に立地するようになった.日本においても,19世紀以降東京や大阪などの大都市において博覧会のモニュメントとして展望タワーが建設され,第2次世界大戦以降は日本全国に様々な展望タワーが建設され「タワー大国」となった(鈴木,2011).<br> 以上のような展望タワー研究においては,展望タワーの歴史を明らかにすることでその成立背景について明らかにされているが,観光施設として展望タワーの立地特性を検証したものではなかった.そこで本研究では,日本における展望タワーがどのような自然条件下に立地し,それらがどのような立地パターンを示すのかを明らかにすることをことで,今後の展望タワー研究の基礎的史料とする.本研究は定量的データとGISを用いて,展望タワーの立地特性の包括的な把握と類型化を行う.<br>2.研究方法<br> 本研究では,展望タワーに関する資料を基に,全国の展望タワーの分布図を作成した.さらに,ヨーロッパにおける展望タワーの立地傾向を考慮し,展望タワーが立地する環境として都市の内外,水域との近接性,および展望タワー周辺の地形を分析項目とした.なお,各分析項目については,国土数値情報より提供されている海岸線,河川,湖沼,都市地域,および標高データを用いた.<br>3.考察<br> 以上の研究の結果,日本における展望タワーに関して以下の傾向が認められた.展望タワーの立地環境については,分析対象とした展望タワーの257棟のうち,160棟が都市域に立地していることが明らかになった.これは,展望タワーの62%が市街化区域やその他の都市域に立地していることを意味し,大都市中心部への展望タワーの立地傾向が示された.<br> また,水域との近接性については,海岸線,河川,および湖沼の3種類の水域ごとに異なる傾向がみられた.海岸線については,展望タワー257棟のうち,74棟が海岸線から500m以内に立地していた.一方,河川および湖沼との近接性については,海岸線のような偏在はみられずに分散して立地していた.<br> 最後に,展望タワーが立地する地形の分析を試みた.展望タワーが立地する地盤の標高では,展望タワー257棟のうち92棟が標高10m以下に立地していた一方で,63棟は標高200m以上に立地しており,展望タワーが平地に多く立地する一方で,一部は山地や丘陵にも立地する傾向があることが明らかになった.さらに,展望タワー周辺の地形を把握するために,展望タワー立地する地盤の標高と展望タワー周辺平均標高との差(比高)を求めた.その結果,比高が10m以下の平地に立地している展望タワーが166棟認められた.一方,比高が30m以上の展望タワーは65棟にのぼり,山頂あるいは断崖にも展望タワー立地する傾向が明らかになった.<br><br>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205694795904
  • NII論文ID
    130005473623
  • DOI
    10.14866/ajg.2014s.0_100052
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ