タイ,バンコクにおける日本人居住者の特徴

書誌事項

タイトル別名
  • The Characteristics of Japanese residents in Bangkok, Thailand

説明

1. 研究目的<br>タイにおいては1985年のプラザ合意を契機として多国籍企業を数多く受け入れ,それに伴い企業の駐在員も増えてきた.特に日本企業による投資は,タイに流入する海外直接投資(FDI)の3分の1以上を占めており,その分だけ日本人駐在員は他国の駐在員数に比べ多い.さらに,駐在員を支援する業務に日本人の現地採用者が用いられてきている.しかし,タイに滞在する日本人の規模は年々拡大しているにも関わらず,これまでタイの日本人社会の規模や集住度に関する研究例は少なく,未だその特徴は明らかでない.<br>本発表では,タイにおける日本人居住者の特徴を明らかにすることを目的とする.他の外国人との比較から,①タイに居住する日本人の規模を推定し,②バンコク都内における日本人の居住分布の特徴を分析する.<br>2. タイにおける外国人労働者<br>タイに居住する外国人は,日本人よりもミャンマー人やカンボジア人などタイ周辺国の人の方が多い.しかし,日本人は就労ビザ取得者が2万9770人(労働省2012年)で,居住者4万3044人(入国管理局2012年)の63%を占める.この割合は日本人が最も高い.また日本人の場合,他国の労働者よりも就労ビザの認可率が高いため,一定の能力が求められるものの比較的容易に就労できる.これが日本人若年労働者をタイに引き付ける一因となっていると推察される.<br>3. バンコクにおける日本人社会<br>日本人労働者数は就労ビザ取得者数を正確な値と認識して良いと考えられるが,ではタイに日本人居住者総数はどの程度であろうか.外務省の2012年在留邦人数調査によれば,就労ビザ取得者(民間企業関係者(本人),報道関係者(本人),自由業者(本人))は2万7121人であった.労働省のデータを元に按分した結果,日本人居住者数はタイ全国で6万人,バンコク都で4万3000人と推定される.<br>バンコク都における日本人居住者の集住度を測るため2000年センサスの20%個票データを用いる.ただし,使用できるデータに含まれる日本人回答者は567人に限られる点に留意する必要がある.バンコク都内160の地区を基準にして,国籍別居住者数の非類似度係数(The Index of Dissimilarity)を求め,多次元尺度構成法(Multi-dimensional Scaling)により国籍別居住者の集住度を求めた.国籍別の比較の結果,日本人や西洋諸国の人びとが特定の地区に集住する特徴が明らかになった.<br>次に,タイ人居住者数に対する日本人居住者数の特化係数から集住地区を計測した.日本人はクローンダンヌア地区(スクムヴィット周辺)やスリヤウォン地区(シーロム周辺)など非常に限られた地区に偏って居住している.これらの地区には,日系不動産会社や日系スーパー,日本人学校(通学バスルート沿線)など対日本人特化型のサービス業が集中しているため,このことが日本人の集住と相互に関連していると考えられる.<br><br> 【付記】本研究は,平成24年・25年度基盤研究(B)「日本企業のグローバル化と若者の海外就職」研究代表者:神谷浩夫(金沢大)による研究成果の一部である.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205694871168
  • NII論文ID
    130005473678
  • DOI
    10.14866/ajg.2014s.0_100040
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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