中国都市における時間地理学研究の歩みと未来
-
- 柴 彦威
- 北京大学
書誌事項
- タイトル別名
-
- Trends of the Time Geography in China
説明
時間地理学の思想や概念が提出されてから早くも半世紀が過ぎっていた。その間、時間地理学は欧米から日本、そして中国などの地域へ拡散してきた。また、こうした地域における時間地理学の受容は、単にその概念などを受けとることだけでなく、現地の特殊な状況を結びついたさまざまな革新を作り出してきた。今は、時間地理学の世界における拡散と革新の過程を見とめる時期が来ている。たとえば、ロンド学派のキーパーソンとしてのKajsa Ellegårdは、このようなプロジェクトを担当しているところである。 <br><br> 時間地理学は、1960年代ごろから発足し、1970年代及び1980年代には欧米に急速に普及してから、1990年代にはやや沈滞期を過ぎた後、1990年代後期からとくにアメリカではGISやLBS及びGPSなどと結びついて、新しい発展を迎えていた。現在、行動主義地理学アプローチと比べたら、時間地理学的な研究は依然熱い人気を呼んでいる。例えば、アメリカ地理学者協会における年会には、必ずしも時間地理学の会場は設けられていた。 <br><br> 中国における時間地理学的研究は1990年代中期に入ってから本格的に始まって、日本のそれに比較して、ほぼ10年ぐらい遅れていた。しかし、中国における急速な都市化に伴って、行動論的な都市研究は大きな発展を過ぎてきた。時間地理学は、人間の日常行動をパスなどで表し、また空間行動パターンを制約でもって解釈して、行動空間を図り住民の生活の質を改善しようとする。中国は、改革開放以来の三十年間及ぶ発展によって経済的な目標を達してから、社会的な発展に転回してきており、個々人の需要を重視した都市空間が求められている。したがって、時間地理学的な都市研究や計画は、ますます重要視される。 <br><br> 中国都市における時間地理学的研究は、北京や広州などの特大都市から蒙自などの県庁所在都市へ、都市人口を対象とした調査から流動人口へ、漢民族の研究から少数民族へと広がってきた。データの収集も、二日間から一週間へ、紙アンケート調査からGPS設備やWEBを利用した調査へと発展してきた。また、研究の内容は、時空間利用や交通行動パターンから、活動空間の計測及び地域間、社会集団間における差異、さらには施設の時空間利用策や個人と家族の活動調整計画と情報提供サービスなどへ、理論的な検討から実践的な活用まで広がっていた。 <br><br> このような時間地理学的な研究は、転換期にある中国都市の特質を、行動論的なアプローチから解明し、急速に変化する都市空間と住民生活を理解する。さらには、都市化における長距離通勤や住民生活空間の乖離、共働き家庭の生活問題と高齢者問題、自家用車使用の依頼と大気汚染による交通問題と健康問題などに対して、時空間行動分析から解決策を検討している。いまや、中国都市における行動論的学派は形成されている。 <br><br> 将来に向かって、理論的には、社会―空間行動論や時間地理学に基づいた行動―空間相互作用の理論モデルと解釈モデルが必要でありながら、実践的には、都市生活空間や生活時間の計画と政策などは求められている。本発表は、中国都市における時間地理学的な研究成果を解説した上で、この理論的枠組みを模索する。
収録刊行物
-
- 日本地理学会発表要旨集
-
日本地理学会発表要旨集 2015a (0), 100029-, 2015
公益社団法人 日本地理学会
- Tweet
詳細情報 詳細情報について
-
- CRID
- 1390001205694971136
-
- NII論文ID
- 130005490158
-
- データソース種別
-
- JaLC
- CiNii Articles
-
- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可