視覚障害者誘導用ブロック設置状況のGISデータベース化

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書誌事項

タイトル別名
  • GIS database of the Tactile walking surface indicators installation conditions
  • 災害時における障害者移動支援の視点から
  • For movement support of vision-impaired persons in a disaster

抄録

厚生労働省(2006)によると視覚障害者数は全国で31万人となっているが,日本眼科医会(2009)では164万人に達すると推定している。また,視覚障害者の日常的な行動に着目すると,「ほぼ毎日外出する」の割合が30.2%(厚生労働省2006)と他の障害者に比べても低く,災害時などにおける移動に大きな困難が伴うことが予想される。 一方,我が国では視覚障害者誘導用ブロック(以下,点字ブロック*)が各所に整備されているが,設置状況は公開されておらず,非常事態に備えて到達可能範囲をあらかじめ調べておくことも難しい。 こうした状況を鑑み,我々は点字ブロック設置状況をGISで視覚的に把握できるよう「点字ブロックデータベース(以下,点字ブロックDB)」の整備を開始している。以下その手法と,一部地域で得られた整備状況,明らかになった問題点を報告する。<br>現時点でのDB整備フローは以下のとおりである。 ① 該当エリアの航空写真を入手 ② ①で点字ブロックを目視にて判読 ③ 画像処理(教師つき分類)により②を補間 ④ ②・③で得られた結果を元にGIS上でトレース ⑤ 「基盤地図情報2500」で④の位置を補正 ⑥ 判読困難な箇所は現地調査にて補足 手法の確立と問題点の洗い出しのため,東京都内の数地区(千代田区・新宿区・文京区・豊島区・世田谷区・八王子市・武蔵野市・調布市・府中市・国分寺市・多摩市)でDB整備を行った。 なお,点字ブロックには危険箇所や誘導対象施設等の位置を示す警告(点状)ブロックと,進行方向を示す誘導(線状)ブロックの2つがある。本DBではこれらを区別している。<br>このようにDB化することで,局所的ながら点字ブロックの配置状況をGIS上で把握できるようになり,支援者が地図を用いてあらかじめ安全なルートを設定することも可能になると考えられる。 一方で,連続性を持って設置されている地域は極めて限られることも明らかとなった。主に主要駅を起点にしたネットワークを成すものの,日常生活を考慮した配置とは言い難いことが多い。また災害時を想定し,後楽園周辺で避難施設との連結性を検証してみたところ,設置個所が大通りの一部に限られているため,点字ブロックを伝って避難施設に辿り着けない場合が多くあることも分かった。 <br>まとめと課題は以下の通り。・点字ブロックのGISデータ化は視覚障害者の移動支援に繋がる ・都心においても誘導ブロックが連続性を持って設置された地域は限定的である(日常のみならず災害時にも活用できるネットワーク構造が必要) ・DB整備エリアを拡大,高精度化するため,作業手法を効率化する必要がある

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205695040896
  • NII論文ID
    130005490089
  • DOI
    10.14866/ajg.2015a.0_100058
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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