20世紀後半以降のフィリピンにおける降水季節変化パターンの長期変化

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タイトル別名
  • Long-term changes in seasonal change pattern of rainfall in the Philippines since the late 20th century

抄録

1. はじめに <br> フィリピンにおける降水の季節変化は,主にモンスーンや熱帯低気圧,地形効果によって特徴づけられており(Akasaka et al. 2007),その年々変動は農作物収量や自然災害の発生にも密接に関連している.そのため,将来の気候変化に伴い,降水の季節変化パターンがどのように変わりうるのかを明らかにすることは重要な課題の一つである.同時に,これまでの降水の季節変化パターンの特徴とその年々変動及び長期変化特性に基づき,将来予測結果を評価する必要があるが,これらについては充分な研究が行われていない.そこで本研究では,その第一歩として,20世紀後半以降の地点降水量データを用いて,降水の季節変化パターンを分類することで,それらの特徴と長期変化傾向を明らかにすることを目的とする.   2. 使用データ及び解析方法 降水量データは,フィリピン気象庁(PAGASA)により観測された1952~2008年までの日降水量データの中から,対象期間中の欠測が2割以下である35地点を選び,半旬降水量データに編集して使用した.  まず,卓越する降水の時空間変動パターンを明らかにするために,35地点のはんじゅん降水量データに対してEOF(Empirical Orthogonal Function)解析を行った.次に,降水量の季節変化をいくつかのパターンに分類するために,EOF解析から得られた主要モードの時係数に対してクラスター分析を行った.クラスター分析の際には,ユークリッド距離とWard法を使用した.これらの結果から,各クラスター平均の時係数と半旬降水量の緯度時間断面図を作成し,各パターンの季節変化特性と出現パターンの長期変化傾向を考察した.   3. 結果と考察 EOF解析の結果,上位2EOFモードで累積寄与率が50%を超えたため,これらを降水量の時空間変動における主要モードとした.ここでは第1EOFモード(EOF1)の結果についてのみ述べる.EOF1はフィリピン全体で同符号となり,57年平均時系列は夏の降水量増加に対応したパターンを示した(図略).因子負荷量はルソン島西部からビサヤ諸島西部にかけて0.6以上と最も大きくなっていた.西岸域では夏季には南西モンスーンの風上側となるため,この時期が雨季となる.よって,EOF1は西岸域における降水量の季節変化パターンを表すものであるといえる.  この結果に基づき,EOF1の時係数に対してクラスター分析を行った結果, 降水の季節変化パターンを6つに分類することができた(C1~C6).クラスターごとに平均した西岸域における半旬降水量の緯度時間断面図をみると,これらのうち,雨季入りもしくは雨季明けが平均よりも遅れるC2パターン(図略)と,通常は1~3月(1~18半旬頃)にみられる乾季の間にも降水が見られるC3パターン(図1上)が,1990年以降に頻繁に出現していることがわかった(図1下).また,1952~2008年の間にC3パターンに分類された年は6年あったが,このうちの5年はラニーニャ現象が発生していた年であった.発表では,各降水の季節変化パターンと,下層大気循環場における風向風速,高度場との関係についても示す.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205695119616
  • NII論文ID
    130007017720
  • DOI
    10.14866/ajg.2016s.0_100304
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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