高密度観測による首都圏におけるヒートアイランド現象と気圧の分布の関係―観測と解析の観点から

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タイトル別名
  • Relationship between urban heat island and air pressure distribution around Tokyo metropolitan area, based on high density observation -From the viewpoint of observation and analysis

抄録

はじめに<br>首都圏ではヒートアイランド現象が広範囲で見られ、高温が見られる地域での気圧の低下が報告されている。また、都市圏の内外で発生する短時間強雨との関係もしばしば指摘されている。しかし、都市内外の詳細な気圧分布が観測されていないため、短時間強雨の発生とヒートアイランド現象やそれに伴う局地的な気圧の分布との関係が十分に議論されていない。そこで、首都圏に温度計と気圧計を多数設置し、都市内外の小学校で気温と気圧の観測を実施した。観測した気温や気圧を主成分分析し、気温と気圧の変動パターンを解析した。本講演では、気温と気圧の卓越する時空間パターンについて報告するとともに、都市気候の研究における観測と解析の観点から、現状と課題について議論を提起したい。<br>気温と気圧の卓越する時空間パターン<br>著者らのグループで、首都圏の小学校の百葉箱にて、気圧49カ所、気温128カ所にて、10分間隔で空間的に高密度に観測したデータに加えて、気象官署で観測されている海面更正気圧および気象庁のAMeDASで観測されている気温を用いて、2014年7月1日~9月30日の10分ごとの領域平均からの偏差の気温と気圧に対して、相関行列を用いた主成分分析を実施した。領域は、首都圏を取り囲むように西は甲府、東は銚子、南は伊豆大島、北は宇都宮の範囲とした(図の範囲)。その結果、①気圧は北西側内陸部と南部沿岸部との気圧変動(PC1)、都心周辺と領域周囲の気圧変動(PC2)、鹿島灘から西方へ伸びるくさび状の気圧変動を示す成分(PC3)の主要3成分が抽出された(図)。②気温は気圧の主要3主成分と類似の空間パターンが抽出された(図略)。③気圧と気温のPC1同士は日周期が卓越し位相もほぼ同じであり、PC2同士の日周期成分は、位相が一致しているわけではないが、都心を中心にヒートアイランド現象が顕著なときに気圧低下が顕著にみられる事例が存在し、PC3同士の日周期成分も位相が一致しているが、日周期というよりはむしろ北東気流に対応して顕著になっていたこと。④気圧と気温の主要3成分の主成分得点には有意な相関関係があること。以上4点が明らかとなった。これらの結果から、気圧と気温の時空間変動は連動しており、首都圏のヒートアイランド現象に関連して気圧の低下が見られることが示唆された。<br>都市気候研究における現状と課題<br>今回報告する観測データを解析する立場から、地理学における課題として考えられることは、①観測データの品質管理およびメタデータの整備の重要性、②①に関連して、気温に影響を及ぼす諸要素(地表面被覆、都市形態など)と実際に観測される気温との関係を解明することの2点が挙げられる。①の重要性については言うまでも無いことであるが、著者らのように独自に観測している気象データのメタデータの共有についてはなかなか進んでいないのが現状である。まずはどのようなメタデータを共有すべきかについても議論を進めていくべきであろう。②については、観測点近傍の気温に影響を及ぼす要素だけで無く、同じような地表面被覆の場所でも、都市の中でどこに立地するのかなどによっても気温は影響を受ける可能性があり、都市が違うと気温への影響が異なることも考えられるので、一都市だけでなく複数の都市で解明していくことが期待される。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205695129984
  • NII論文ID
    130005279896
  • DOI
    10.14866/ajg.2016a.0_100168
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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