京都府の都市における緑地構成要素の変化に関する地域的特性

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タイトル別名
  • Regional characteristics in Kyoto Prefecture as viewed from changes in green space component
  • -都市農業振興基本法の施行をふまえて-
  • Investigation into on the basis of the enforcement Basic Law for urban agriculture promotion

抄録

<br><br>Ⅰ はじめに<br><br> 都市農地は,環境保全や防災,教育等の多面的機能を有することから,都市において極めて重要なものとなっている.このため,2015年4月16日に第189回通常国会において「都市農業振興基本法」が議員立法により成立し,同年4月22日に公布された.今後,同法第13条に基づき地方公共団体が「土地利用計画」を策定することとなるが、この計画が今後の都市農地を保全していく上での鍵を握るものと推察される.そこで,本研究では,地方公共団体が今後策定する「土地利用計画」のあるべき姿について,地理学的視点から検討を行う上で必要な基礎資料を得るため,日本の三大都市圏の一つである近畿圏の一部をなす京都府の特定市とその周辺を研究対象地域とし,公園,農地,森林を都市における緑地構成要素として捉え,それらの変化の地域特性を把握することを目的とする.<br><br>Ⅱ 研究対象地域と研究方法<br><br>本研究の対象地域は,京都府における特定市とその周辺の4町とする.現在,京都府では市のうち京都市と宇治市,亀岡市,城陽市,向日市,長岡京市,八幡市,京田辺市,木津川市の9市が、生産緑地法の適用を受ける特定市となっている.また,大山崎町と久御山町,井手町,精華町を対象地域として含めた.その理由としては,これらの町が都市計画区域内にあるとともに,京都府内の,あるいは隣接する大阪府や奈良県の特定市に囲まれているからである.緑地としての調査項目は,公園,農地,森林とする.また,これらの公園,農地,森林については,都市の緑地を構成しているという意味で,本研究では緑地構成要素として扱うこととする.公園の面積については,都市公園法に基づくまたは準ずる公園の面積とする.農地および森林の面積は世界農林業センサスの経営耕地面積および林野面積とする.統計収集年次は,1970年,1980年,1990年,2000年,2010年とする.これは,1968年に都市計画法が改正され,その後1972年に都市公園等緊急整備法が施行されるなど,それまでの緑地の減少に歯止めをかけるための法整備が1970年代前半に進んだからである.つぎに,分析方法についてであるが,緑地率は市町村ごとに(公園面積+農地面積+森林面積)/行政区域面積*100(%)とする.緑地の構成要素の組み合わせパターンは,土井(1970)による修正ウィーバー法に基づき分析を行う. <br><br>Ⅲ 結果および考察<br><br> 本研究の対象地域全域の傾向をみると,1970年から2010年にかけて,森林面積は減少しているものの,農地面積の減少と比べ大きくはなく,公園面積が増大しているものの,農地面積の減少を補うには至っていない.このため,緑地率は一部の地域を除き全体的に低下傾向にあり,京都市および京都市に比較的近い地域で顕著である.京都市では,1970年には上京区だけで公園が卓越し,下京区,南区などでは農地が卓越していたが,2010年には上京区と中京区で公園が卓越し,農地が卓越する区は皆無となっている.京都市に隣接する向日市や久御山町は1970年以降2010年に至るまで農地が卓越している.今後,このような市町ごとの緑地構成要素の地域的特性を踏まえた上で,都市農地を保全するための「土地利用計画」を検討していく必要があるものと考えられる.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205695369344
  • NII論文ID
    130007017864
  • DOI
    10.14866/ajg.2016s.0_100335
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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